時評(3月19日)

自動車や電機など大手企業の春闘で、経営者側が賃上げ回答を一斉に示した。新型コロナで経済の先行きが不透明なことから、総じて低水準の回答となった。業績悪化企業はやむを得ない面もあるが、テレワークなど新しい働き方を踏まえた賃金体系の在り方の議論は.....
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 自動車や電機など大手企業の春闘で、経営者側が賃上げ回答を一斉に示した。新型コロナで経済の先行きが不透明なことから、総じて低水準の回答となった。業績悪化企業はやむを得ない面もあるが、テレワークなど新しい働き方を踏まえた賃金体系の在り方の議論は今後も継続していくことが大事だ。[br][br] 春闘の舞台はこれから中堅・中小企業に移る。コロナ後の事業が展望できなければ、雇用の維持すら難しくなろう。急激に変化する経営環境を踏まえ、労使が課題を共有して、長期的な視点で新しい働き方、新しい賃金体系に向けて実りある議論を行い、当面の危機を乗り切ってもらいたい。[br][br] 大手企業では、テレワークの普及などで比較的業績が好調だった電機各社が、賃金水準を引き上げるベースアップ(ベア)実施で妥結。回答額はほぼ前年並みだった。[br][br] 一方、ホンダなど自動車各社や造船・重機大手の労働組合は経営環境が厳しいことを受けてベア要求を見送った。トヨタ自動車や日産自動車は満額回答だったが、ベアの有無は公表しないなど、これまでのベア重視の考え方が崩れ始めた。[br][br] 企業業績の差が妥結額に反映され回答にばらつきが出た。賃上げ要求と回答を横並びで行うこれまでの統一交渉の慣行に限界も見え始めた。[br][br] 経団連によると20年春闘での大手企業の賃上げ平均は2・1%だったが、今年はそれを下回り、8年ぶりに2%を切る可能性もある。[br][br] 中堅・中小企業の春闘はこれから本番を迎える。賃上げ水準の指標となる大手企業の業績がまだら模様で、しかもベアを明示しない形での回答が増えたため、今後の交渉に響きそうだ。[br][br] 日本の平均賃金は経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国の中で下位にある。水準の引き上げが課題で、中堅・中小企業の賃金水準が鍵を握る。経営側は賃上げに努力してもらいたい。[br][br] 大手の春闘では賃金だけでなく新しい働き方も大きなテーマとなった。コロナ禍で急速に進んだ社会のデジタル化などに対応して、企業が生き延び、発展していくには多様な人材の確保が必要だ。高い技能を持った人材の中途採用も増えよう。それに伴い賃金体系の在り方は当然変わらざるをえない。[br][br] 人材の確保・育成は企業の将来を左右するだけに、成果重視への賃金体系への移行は避けられないだろう。労使ともに働き方、賃金の両面で意識改革が急がれる。