天鐘(3月19日)

先日、梅や桜の話題を取り上げたが、いよいよ全国から本格的な桜の開花の便りが届くようになった。北国の風はまだ冷たいが、いつもの年より早めの春の足音には心が軽くなる▼3月の桜に、大学入試の合否電報を思い出す。昭和の頃、「サクラサク」の電文が合格.....
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 先日、梅や桜の話題を取り上げたが、いよいよ全国から本格的な桜の開花の便りが届くようになった。北国の風はまだ冷たいが、いつもの年より早めの春の足音には心が軽くなる▼3月の桜に、大学入試の合否電報を思い出す。昭和の頃、「サクラサク」の電文が合格の知らせになった。つらい冬の受験勉強が報われた若者たちにとっては、まさに春到来のうれしさだった▼桜は暖かいだけではうまく咲かない。前年の花芽が秋にかけて休眠、冬の間に寒さにさらされる。ここで準備を整え、気温が上がると一斉に開花する。思えば、花を咲かせるために厳しい冬が必要なのは桜も人間も同じなようだ▼先月、一足早く「サクラサク」が届いた32校が“聖地”に集う。春の選抜高校野球が今日、甲子園で幕を開ける。コロナの影響で、センバツの開催は2年ぶり。球児以上にファンの胸が高鳴る▼この時のために、どのチームも冬に体と心を鍛え上げてきた。今、大きく膨らむ若いつぼみたちを思う。大会歌にある〈新しい季節のはじめ〉の、〈新しい人〉たちの全力プレーは皆の力。望むは、選手たちの満開の笑顔である▼いまや「球春」も俳句の季語。正岡子規の〈まり投げて見たき広場や春の草〉からは、芝の匂いや土の感触まで伝わってくる。困難の中で巡り来た春と、そこに今年は野球がある喜び。若草の広場に2年分のエールが送られる。