【同性婚裁判で初判断】社会の変化強調、国に対応迫る

 同性婚訴訟の札幌地裁判決後、記者会見する原告(手前)=17日午後、札幌市
 同性婚訴訟の札幌地裁判決後、記者会見する原告(手前)=17日午後、札幌市
同性同士の結婚を認めない民法などの規定を違憲とした札幌地裁判決は、同性愛者に対する社会の意識が肯定的に変化している点を強調し、不安定な立場に置かれた性的少数者の声に応えた。法制化に動かない国に対応を迫った判断と言える。 ▽保障 さいたま市で.....
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 同性同士の結婚を認めない民法などの規定を違憲とした札幌地裁判決は、同性愛者に対する社会の意識が肯定的に変化している点を強調し、不安定な立場に置かれた性的少数者の声に応えた。法制化に動かない国に対応を迫った判断と言える。[br][br] ▽保障[br][br] さいたま市で男性のパートナーと同居する会社員稲垣晃平さん(29)は、新型コロナウイルス禍で不安が尽きない。「彼が入院しても治療の意思決定に関われないかもしれない。親族以外は面会できない病院もある。もしものことがあったら彼名義の家に住み続けられるのか。2人で築いた財産を相続できるのかも心配だ」。2人は市のパートナーシップ制度で結婚相当と公認されているが、法的に保障された関係ではないためだ。[br][br] 東京に自宅がある池田宏さん(61)のパートナーはニュージーランド人。日本人と結婚すれば得られる「在留資格」が出ないため、池田さんは海外と日本を行き来せざるを得ない。「同性というだけで職業や居住地の選択肢を狭められる。日本で一緒に暮らせず、老後の見通しも立たない」[br][br] 札幌地裁は、同性カップルが抱えるこうした不利益に向き合った。判決はまず、結婚によって本人と家族の身分関係が公に証明され、さまざまな法的地位が与えられると指摘。同性愛という性的指向は人種や性別と同様に自分の意思で変えられない点を踏まえ「同性愛者だけが法的な利益を全く得られず、差別に当たる」と判断した。[br][br] ▽前提[br][br] 判決は社会の変化にも言及。意識調査では同性カップルの保護に肯定的な人がおおむね半数程度まで増え、同性同士のパートナーシップ制度も広がっていると強調した。[br][br] 実際、国立社会保障・人口問題研究所が全国の既婚女性を対象にした2018年の調査では、約6千人のほぼ7割が同性婚を法律で認めるべきだと回答。特に50代以下は多くが肯定的だった。原告弁護団によると、パートナーシップ制度がある自治体も1日時点で78に上る。国民の間に問題意識が広がっていることが分かる。[br][br] 法務省幹部は判決後「婚姻はかつて男女の性的なつながりを前提とした枠組みだったが、その前提が変化しているのは確か。どこまでを夫婦と認めるべきかという『軸』が動きつつあるのかもしれない」と語った。[br][br] ▽慎重[br][br] ただ、政府の動きは鈍い。同性婚を巡り各地で一斉提訴があった19年2月、衆院予算委員会で当時の山下貴司法相は「家族の在り方の根幹にかかわる問題で、国民的な議論が必要。極めて慎重な検討を要する」と答弁した。[br][br] 同年6月には野党3党が同性婚の制度化を図る民法改正案を衆院に提出。今年2月の予算委分科会では衆院法制局が「同性婚の法制度化が憲法上の要請であるとする考えは、十分成り立ち得る」と答弁した。だが保守的な支持層を意識しているのか、与党にも具体的な動きは見えない。[br][br] 札幌地裁は、高年齢層が同性婚に否定的な理由を「同性愛は精神疾患という誤った知見が1980年ごろまで通用していたため」と言い切り、国会に対応を促した。[br][br] 性的少数者を支援する認定NPO法人「虹色ダイバーシティ」の村木真紀代表は「判決は、変わりつつある社会で法制度が取り残されていると明確なメッセージを出した。自治体や企業の取り組みは進み、世論も動いている。政府や国会は早く対応すべきだ」と訴えた。 同性婚訴訟の札幌地裁判決後、記者会見する原告(手前)=17日午後、札幌市