時評(3月17日)

高齢者の自動車運転対策がまとまった。3年間に信号無視など11種類のうち一つでも違反した75歳以上の運転者は運転技能検査が義務化され、不合格になると免許更新ができなくなる。高齢になれば操作ミスなどによる重大事故を起こす確率は高くなっており、命.....
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 高齢者の自動車運転対策がまとまった。3年間に信号無視など11種類のうち一つでも違反した75歳以上の運転者は運転技能検査が義務化され、不合格になると免許更新ができなくなる。高齢になれば操作ミスなどによる重大事故を起こす確率は高くなっており、命を守るためには必要な措置である。[br] 警察庁の有識者会議がまとめた報告書によると、実際に車を運転して検査を受ける対象となる違反は、信号無視のほか逆走、速度超過、禁止のUターン、横断歩行者妨害、踏切不停止、携帯電話を操作しながらの運転など事故と直結する行為だ。[br] 有識者会議は重大事故を起こした75歳以上の違反歴を調べ、公表した。過去3年間にこれら11種類のうちいずれかの違反をした運転者が、死亡・重傷事故を起こした割合は10万人当たり119・1人で全体の2・1倍に上った。[br] 交通白書などを見ても、高齢になればなるほど、ハンドル、ブレーキ、アクセルの操作ミスによる事故の割合が高くなっている。信号無視や逆走を摘発された高齢者は、その時だけでなく、過去に何回もしていたことが考えられる。高齢になれば程度の差こそあれ認知機能が衰え、判断が遅くなる。[br] 2019年4月、東京・池袋で乗用車が暴走、横断歩道を歩いていた母子2人がはねられて死亡する事故が起きた。運転していた87歳の男性がアクセルとブレーキを踏み間違えた事故だったとして自動車運転処罰法違反の罪で起訴されている。[br] 運転技能検査の普通免許合格は100点満点で70点以上だが、合格者はさらに認知機能検査を受けなければならない。「自分は大丈夫だ」と思いたいが、やはり客観的な評価が必要だ。[br] 75歳以上の運転免許所有者は19年時点で約582万人、団塊の世代がその年齢になる24年には約760万人と予測される。警察庁は22年6月までに道交法を改正、施行する方針だという。[br] 公共交通機関が多い都会では、車がなくても暮らせるが、車がないと買い物も不自由な過疎地もある。改正道交法では、自動ブレーキなど先進安全機能を備えた「安全運転サポート車(サポカー)」が条件の限定免許も創設される。社会の実情に合ったスムーズな新制度への移行が望まれる。[br] 高齢者にとって運転免許の更新手続きが面倒になる。しかし、自分と他人の命に関わる問題であり、悲惨な事態に陥らないよう高齢者運転の現実を冷静に見つめるべきだ。