【相模原殺傷判決から1年】「誰にも生きている意味はある」 裁判傍聴重ねた障害者の父

 横浜市内の自宅で取材に応じる土屋義生さんと長男荘真君=13日
 横浜市内の自宅で取材に応じる土屋義生さんと長男荘真君=13日
相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人を殺傷したとして、植松聖死刑囚(31)に死刑判決が下されてから16日で1年となった。横浜市戸塚区の土屋義生さん(41)は、重度障害がある長男荘真君(7)と裁判の傍聴を重ねた。時が過.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 相模原市の知的障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら45人を殺傷したとして、植松聖死刑囚(31)に死刑判決が下されてから16日で1年となった。横浜市戸塚区の土屋義生さん(41)は、重度障害がある長男荘真君(7)と裁判の傍聴を重ねた。時が過ぎた今も、植松死刑囚がなぜ事件を起こしたのかは分からないままだ。ただ、同じ1年で荘真君は確実に成長した。その姿に思いを強くする。「誰にも生きている意味はある」[br][br] 荘真君は生後2週間で髄膜炎と診断され、寝たきりになった。人工呼吸器を装着し、声や言葉を発することはできない。常に目が離せず、土屋さんは2019年3月に仕事を辞め、昼夜問わずケアに当たってきた。[br][br] 自身の生き方に迷いも感じていたころだった。「障害者はお金と時間がかかる」との死刑囚の主張を否定しきれず、荘真君を育てていくことの答えを見つけるため、裁判に足を運んだ。傍聴席に親子で並ぶ姿を、死刑囚に見せつけてやりたいという思いもあった。[br][br] 初めて傍聴したのは、昨年1月の第5回公判。死刑囚の元交際相手の証言によると、死刑囚はぬいぐるみでも名前を言えれば人間と認められるという映画を見て、興奮していたという。自分の名前が言えるかどうかを、殺害対象を選ぶ基準としたという死刑囚の主張と符合した。[br][br] その時、傍聴席を見た死刑囚と目が合い、笑ったように思えた。「荘真に悪意が向けられている」。戦慄(せんりつ)し、目立たないようにと、荘真君の医療機器のアラーム音を思わず切った。立ち向かうはずだったのに、逃げた気がして落ち込んだ。[br][br] 傍聴は計4回したが、知りたいことは分からなかった。印象的だったのは、死刑囚が遺族から大切な人は誰かと問われた時。言いよどみながら「大切な人はいい人です」と答える姿は、つらそうだった。死刑判決が言い渡され、メモを取っていたノートに「何も分からなかった」と書いた。[br][br] それから1年。死刑が確定した植松死刑囚は以前のようにマスコミと頻繁に面会できず、自分勝手な主張を繰り広げることはできない。[br][br] 昨年4月、荘真君は特別支援学校に入学した。教諭や友達と接し始めると、目や口の動きによる意思表示がよりはっきりし、自発呼吸も以前よりできるようになった。「人は成長するんだ」。傍聴の契機となった、死刑囚の「障害者はお金と時間がかかる」との考えに対する答えを見つけた。[br][br] 今はブログで荘真君との日々の暮らしを発信している。傷つくコメントが寄せられることもあるが、愛する息子と一緒に生きる幸せを伝えたいと思っている。 横浜市内の自宅で取材に応じる土屋義生さんと長男荘真君=13日