【連載・漂うコメ】(2)販売不振

倉庫に積まれている一等米。秋に搬入されて以来、出荷の動きはわずかだ=2月上旬、新郷村
倉庫に積まれている一等米。秋に搬入されて以来、出荷の動きはわずかだ=2月上旬、新郷村
2月上旬、新郷村にある八戸農協の一等米保管倉庫には、2020年産の「まっしぐら」約2万2700袋(30キロ入り)が山積みになっていた。例年であれば3分の1は出荷されている時期だが、新型コロナ禍で需要が激減したため、昨秋に入庫したまま、ほとん.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 2月上旬、新郷村にある八戸農協の一等米保管倉庫には、2020年産の「まっしぐら」約2万2700袋(30キロ入り)が山積みになっていた。例年であれば3分の1は出荷されている時期だが、新型コロナ禍で需要が激減したため、昨秋に入庫したまま、ほとんど動きがないという。担当者は「まっしぐらは業務需要が大半で、影響をじかに受けている。6年前を思わせる荷動きで、同じようにならなければいいが…」と表情を曇らせた。[br][br] 「6年前」とは、14年産の米価が豊作と過剰在庫で大暴落したことを指す。青森県産米も打撃を受け、販売委託を受けた各農協が生産者に仮払いする概算金(一等米、60キロ)は、「まっしぐら」「つがるロマン」とも7千円台と、過去最低を記録。ここ数年は高値が続いていたが、20年産は両銘柄とも800円減と、6年ぶりの値下げとなった。[br][br] コメ余り傾向は深刻で、農林水産省がまとめた21年1月の民間在庫量は、前年同期を27万トン上回る322万トン(速報値)と、同月としては14年産の343万トンに迫る水準だ。余剰感から価格も下落し、1月の相対取引価格(玄米、60キロ)は、全銘柄平均で前年同期より6%安い1万4903円。まっしぐらは9%安い1万3288円だった。[br][br] 需給安定に向けた国の施策の一つが、20年産米の余剰分をストックし、販売を21年秋以降に持ち越す「周年販売」だ。全農(東京都)が事業を活用する方針で、全国で20万トン、青森県分は約1万トンが対象となる。流通量を一時的に減らし、21年産で同じ数量分の作付けを主食用以外に誘導する計画だが、周年販売のコメはいずれ市場に出回り、実際に在庫を縮小できるかは未知数だ。[br][br] 全農県本部の成田具洋米穀部長は「主食用米の生産量が減らなければ在庫量が増す一方で、どこまで価格が下がるか見通しが立たない」と危機感をにじませ、本質的には国や県の補助金を活用した生産対策が重要との認識を示した。[br][br] 県内業者では、コロナ禍を機に販売戦略を見直す動きもある。「どうすればご飯を食べてもらえるか、真剣に考え直すべきタイミングだ」と強調するのは、八戸市の米穀卸業「ライケット」の河村泰輔常務取締役。キーワードに「時短と健康」を挙げ、「雑穀との組み合わせやパックご飯、冷凍商品などに成長の可能性を見いだしたい」と展望を語った。倉庫に積まれている一等米。秋に搬入されて以来、出荷の動きはわずかだ=2月上旬、新郷村