震災教訓に減災・避難対策を強化/八戸の臨海工業地帯

東日本大震災の津波を教訓に、エプソンアトミックスは避難やリスク分散の対策を講じている(写真はコラージュ。上から時計回りに、北インター事業所、震災被害を伝えるパネル、必需品を備蓄した避難エリア)
東日本大震災の津波を教訓に、エプソンアトミックスは避難やリスク分散の対策を講じている(写真はコラージュ。上から時計回りに、北インター事業所、震災被害を伝えるパネル、必需品を備蓄した避難エリア)
未曽有の被害をもたらした東日本大震災の大津波を教訓に、八戸市の臨海工業地帯に拠点を構える企業は減災・避難対策を講じている。大規模工場は従業員の人数も多く、一時避難場所の整備や定期的な防災訓練を通して予測不能な自然災害に対応してきた。一方、緊.....
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 未曽有の被害をもたらした東日本大震災の大津波を教訓に、八戸市の臨海工業地帯に拠点を構える企業は減災・避難対策を講じている。大規模工場は従業員の人数も多く、一時避難場所の整備や定期的な防災訓練を通して予測不能な自然災害に対応してきた。一方、緊急事態でも損害を最小限に抑え、早期復旧や生産活動の継続に向けた方策を取りまとめた事業継続計画(BCP)の策定も進展。計画を戦略的に運用する「マネジメント」の重要性が高まり、震災から10年がたつ今も各企業は備えと対策の見直しを図っている。[br][br] 電子部品の原材料となる微細合金粉末を製造するエプソンアトミックス(同市)は、河原木海岸地区にある本社工場が震災の津波に襲われた。場内一帯は1メートルほど浸水し、電源関係やポンプといった重要な機械設備が大きな被害を受けた。[br][br] 当時は自社製品の需要増を背景に、新工場を建設する場所の選定を進めていたが、震災を受けて高台に適地を求めた。市内の内陸部にある八戸北インター工業団地を候補地に決め、2013年10月に「北インター事業所」を開設した。[br][br] 臨海部の本社工場では、14年1月に4階建ての厚生棟を新設。高さ20メートル超の最上階は避難エリアとし、場内で働く全従業員を十分に収容できる約300人分のスペースを確保している。[br][br] 食料や飲料水、毛布、非常用発電機、簡易トイレなども備蓄。帰宅困難者を想定し、約150人が3日間の避難生活を送れるように準備した。震災の記憶を風化させないよう、当時の被害状況を伝えるパネルを展示し、毎年3月11日には避難訓練を実施している。[br][br] 北インター事業所の開設は、予期せぬ災害に備えた「リスク分散」の要素もあり、本社工場が被災した際は代替生産する役割を担う。BCPは随時改めており、緊急時の原料・資材調達や輸送手段を確保して生産活動の継続を図る方針だ。[br][br] 事業管理部の大野龍一部長は「BCPは自己評価して何度も見直している。緊急時に計画に沿って運用できるよう、試行や訓練を重ねていきたい」とし、実効性の向上を重視している。[br][br] 八戸港の臨海工業地帯北部に、約148万平方メートルの広大な敷地がある三菱製紙八戸工場。協力会社の関係者も含め、日中の場内では約千人が働いている。[br][br] 震災後は津波に備えた避難計画を作成し、従業員らが24メートルほどの高さがある複数の建物に一時避難する対策を講じた。10年前に津波被害が大きかった区域に面した海中では現在、国による浚渫しゅんせつ土砂の埋め立て工事が進められており、事業が完了すれば減災につながることも期待される。[br][br] 一方、国が公表した日本海溝・千島海溝沿いを震源とする巨大地震モデルを踏まえ、同社は新たな対応にも乗り出している。市が大規模災害時に自衛隊施設を緊急避難場所にできる協定を締結し、従業員らが陸上自衛隊八戸駐屯地内に避難することが可能になった。[br][br] 八戸工場総務グループの太田中公典グループリーダーは「自然災害に備えて防災訓練などを続け、日ごろから防災意識を高めていきたい」と話している。東日本大震災の津波を教訓に、エプソンアトミックスは避難やリスク分散の対策を講じている(写真はコラージュ。上から時計回りに、北インター事業所、震災被害を伝えるパネル、必需品を備蓄した避難エリア)