天鐘(3月8日)

八戸市が「氷都」と呼ばれるように、「薬都」といわれるのが富山市だ。〈越中富山の薬売り〉で有名な薬の街。家庭の配置薬という独自のビジネスモデルは江戸の昔から続く▼その売薬さんが受け継ぐ商売スタイルが「先用後利(せんようこうり)」。まず一通りの.....
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 八戸市が「氷都」と呼ばれるように、「薬都」といわれるのが富山市だ。〈越中富山の薬売り〉で有名な薬の街。家庭の配置薬という独自のビジネスモデルは江戸の昔から続く▼その売薬さんが受け継ぐ商売スタイルが「先用後利(せんようこうり)」。まず一通りの薬を預け置き、使った分のお代だけ後で頂く。優先すべきは利益より顧客の健康―との理念である。まごころの商いは互いの信頼関係の上に成り立ってきた▼信用を裏切る不祥事である。ジェネリック医薬品(後発薬)の「日医工」(富山市)が富山県から業務停止命令を受けた。試験で不適合になった薬を砕き再利用、品質管理に問題ありと指摘された▼不適切な製薬は10年以上続いていたらしい。健康被害はないそうだが、本来、廃棄の品と知れば服用はためらわれる。薬を扱う者としての自覚はどこへ。掲げた同社のスローガン「超品質」が泣く▼背景には、医療費削減を目指す国がジェネリックの普及を後押しする事情もある。製造現場からは「安定供給を第一に考え、チェックがおろそかになった」との反省が聞かれる。あるべき優先順位を見失ってしまったようだ▼先頃は、水虫の薬に睡眠導入剤が混入した問題があった。そして今は、コロナワクチンの副反応が気になるところでもある。薬に向けられる市民の目は敏感だ。今回の行政処分、再発防止のための苦い薬として服用してほしい。