三陸沿岸道路八戸―久慈間が、20日に開通する。さらに年内には八戸―仙台間の全線開通が見込まれている。県境を越えてさまざまな交流人口が拡大することが予想されるため、沿岸各都市が観光や産業で互いに補い合って振興を目指す動きが活発化することに期待したい。[br] 三陸沿岸道路は、八戸と仙台を結ぶ総延長359キロの高規格幹線道路で、国が東日本大震災からの復興道路と位置付けている。[br] 八戸―久慈間では、昨年12月に階上―洋野種市間が開通しており、残る洋野種市―侍浜間が開通することで、八戸と久慈が直接結ばれる。両都市間の移動時間は国道45号を使うよりも25分ほど短縮されて約40分になり、通勤・通学圏内となる。また三陸沿岸道路は、有料区間が宮城県内の一部のみで、それ以外は無料だ。[br] 一方、三陸沿岸道路の工事は最終盤に入っており、いわゆる復興特需は間もなく終了する。建設業者の受注は大幅減が確実で、全国各地から集まった工事関係者も減るため、飲食店、ホテル、旅館業への悪影響は避けられない。また国道45号の交通量減少に伴い、沿線事業者の存在感低下も懸念される。[br] ただそれでも、無料の高規格幹線道路で沿岸各都市が結ばれるメリットは大きい。[br] 八戸にとっては、企業が人材の採用活動を行うエリアを久慈周辺に広げることができる。また、支店を出すことなく営業エリアを広げることも可能だ。[br] 久慈にとっては、観光面への好影響が大きい。企業にとっても、地元の数倍の人口を抱える都市で直接営業活動が展開できるため、ビジネスチャンスの拡大が期待できる。[br] また、青森県南と岩手県北の沿岸には、三陸復興国立公園とみちのく潮風トレイル、三陸ジオパークという広域観光資源がある。エリア内の移動時間が短縮されることで行程が組みやすくなるため、首都圏から観光客を呼び込める旅行商品を作ることが可能となり、全国にPRすることもできるだろう。[br] これらの取り組みを支援するため、行政が県を越えた連携をより強化する必要があることは言うまでもない。[br] 東日本大震災から10年が経過する。インフラ整備を中心とした国の復興支援が減っていくことは避けられない。復興バブルに頼らず経済圏として自立し、震災前より経済振興を図るためにも、復興道路という「つながり」を官民一体となって大事にしたい。