人間に代わりシステムが主体となる自動運転「レベル3」対応車の市販で、日本が一番乗りを果たした。国の法整備を土台にホンダが量産化を実現、官民連携で世界の主導権確保を狙う。対する米国や中国は試験的な無人走行やサービスで先行し、自動運転社会の到来を見据えた大競争が、いよいよ本格化する。[br][br] ▽チャレンジ[br][br] 「移動はもっと安心で心豊かなものになる。ホンダのチャレンジの象徴だ」。開発責任者の青木仁氏は4日の記者会見で「世界初」の新型レジェンドをアピールした。[br][br] 次世代技術の中核となる自動運転を巡っては、世界のメーカー各社が激しくしのぎを削ってきた。日本では日産自動車などが一定条件下でハンドルから手を離して走行できるレベル2の車を販売しているが、運転の責任を負うのは、あくまでドライバーだ。今回のホンダ車は高速道路の渋滞時という制限付きながらシステムが運転主体になるという点で、大きく一線を踏み越えた。[br][br] 開発段階では、安全性を担保するハードルは「てっぺんが見えないくらい」(担当者)高かった。ホンダは事故のリスクを徹底的に抑えるため、約1千万通りの交通状況を想定した模擬実験や、約130万キロに及ぶ走行実験を繰り返した。[br][br] ▽切り札[br][br] 日本政府が世界に先駆けて法整備を進めた背景には、基幹の自動車産業で立ち遅れることへの強い危機感があった。2020年をめどにレベル3を実用化する国家戦略の下、19年に道路運送車両法と道路交通法を改正し、公道を走行できる環境を整えた。[br][br] 自動運転は事故防止や高齢者の移動手段の確保、物流のドライバー不足解消など、日本が抱える社会課題を解決する切り札として期待されている。法整備で先行すれば「国際的なルール議論をリードしやすくなる」(みずほ情報総研の西村和真チーフコンサルタント)との算段もあった。[br][br] ▽責任の所在[br][br] だが海外では、SFを地で行く無人運転の現実が既に生まれている。[br][br] 米グーグルから分社化したウェイモは昨年10月、運輸規制が緩和された米アリゾナ州で自動運転の配車サービスを始めた。運転席はおろか助手席にも人の姿はない。一般の乗客がスマートフォンのアプリで呼んで利用できる完全自律走行の「ロボタクシー」だ。[br][br] 中国では、一定の条件下でシステムが全てを操作する「レベル4」相当の自動運転タクシーが登場し、各地方政府が競って試験許可を出している。新型コロナウイルスの被害で有名になった湖北省武漢市では2月末、市民向けの体験サービスが始まった。[br][br] 自動運転の普及に向けては、技術面、ルール面とも克服すべき課題はなお多い。米国では18年に、配車大手ウーバーが開発中の自動運転車が公道試験中に歩行者をはねて死亡させる事故が発生。責任の所在を巡って議論が巻き起こった。[br][br] 規制緩和で技術革新を後押ししつつ、最優先の安全性を法整備でどう担保するか。日本を含む各国が今後も問われ続けるテーマとなる。(東京、ニューヨーク、北京共同)