菅義偉政権の新型コロナウイルス対策の本気度を疑わせる与党議員の不祥事が相次いでいる。自民党の松本純元国家公安委員長や公明党の遠山清彦幹事長代理ら計5人の衆院議員が、緊急事態宣言発令中の夜に東京都内のクラブに出入りしていたことが明るみに出た。[br][br] 政府は飲食店の午後8時までの営業時間短縮と、不要不急の外出自粛を求めている。そのさなかの与党議員の緩み切った振る舞いは、苦境に耐えている国民への背信行為だ。[br][br] 遠山氏は政治資金の不適切な支出問題も加わって議員辞職し、次期衆院選に立候補しない考えも表明したが、自民党の4氏は政府や国会、党の役職を辞し離党したものの議員辞職は否定している。コロナ対策に不可欠な政治への信頼がとりわけ重要なこの時期に、4氏が国会議員の座にとどまることに国民の理解が得られるとは思えない。[br][br] 菅首相は自民党総裁として、党内の綱紀粛正に重大な責任を負っている。4氏に議員を辞職するよう促すべきだろう。[br][br] 松本氏は、文部科学副大臣を務めていた田野瀬太道氏と衆院議院運営委員会理事だった大塚高司氏と深夜まで飲食を共にしながら、問題発覚直後には「1人で行った」と虚偽の説明をしていた。田野瀬、大塚両氏を「かばいたいとの思い」があったと釈明したが、虚偽説明で切り抜けようとした姿勢は「選良」と呼ばれる立場の国会議員には到底ふさわしくない。[br][br] 特に深刻なのは、松本氏らが批判を浴びて離党した後に、女性と高級ラウンジを訪れていた自民党の白須賀貴樹衆院議員のケースだ。常軌を逸した行動というほかない。白須賀氏は過去に、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職事件で贈賄側の中国企業から接待を受けた。秘書による当て逃げ事故が発覚したこともある。次期衆院選には出馬しない意向だが、地元の自民党千葉県連の県議団は議員辞職勧告を党本部に求める方針を決めている。[br][br] 自民党が政権を奪還した2012年の衆院選で大量に初当選し、その後も「自民1強」の追い風で当選を重ねた議員は「魔の3回生」と呼ばれ、白須賀、田野瀬両氏も該当する。この一団からは不祥事による離党や議員辞職が続発している。[br][br] 今回の非常識な行動の背景には、議員の資質の劣化という構造的な要因も潜んでいるのではないか。自民党はこの問題を放置してきた責任を重く受け止め、人材発掘と議員教育の在り方を抜本的に再検討すべきだ。