時評(2月19日)

米ファイザー製の新型コロナウイルス感染症ワクチンが承認され、医療従事者への先行接種が始まった。欧米より約2カ月遅れながら、感染収束の見通しが立たない中で期待は高まる。 だが、約1億人を対象にした前例のない集団接種の入り口にすぎず、本番はこれ.....
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 米ファイザー製の新型コロナウイルス感染症ワクチンが承認され、医療従事者への先行接種が始まった。欧米より約2カ月遅れながら、感染収束の見通しが立たない中で期待は高まる。[br] だが、約1億人を対象にした前例のない集団接種の入り口にすぎず、本番はこれからだ。[br] 接種するかどうかは個人の判断による。政府はより多くの人に接種してほしいとの立場だが、国民の理解を得るには、正確で丁寧な情報発信が不可欠だ。[br] 実務を担う自治体や医療機関はコロナ禍対応で既に疲弊している。新たな負担を軽減するきめ細かい支援も求められる。[br] 医療従事者への先行接種は同意を得た最大約4万人が対象だ。ファイザー製ワクチンは国内臨床試験(治験)結果も踏まえ承認されたが、その対象は160人と少ない。[br] 先行接種は接種本番に向けたモデルになる。副反応の頻度や程度、接種後の健康状況などに関するデータのほか、作業上の混乱例やトラブルも明らかにしてほしい。マイナス情報も含めて開示することが接種への信頼向上につながるだろう。[br] 政府は4月以降に65歳以上の高齢者、さらに持病がある人に対象を広げる計画だ。しかし欧州連合(EU)がワクチン輸出管理を強化していることなどから供給スケジュールは確定していない。自治体からは供給の時期や量などの情報が明示されないことへの戸惑いが広がる。会場や医療スタッフの確保などの作業が進めにくいという。[br] 本格的な国産ワクチン開発が出遅れて海外頼みになった経緯がある。やむを得ない面もあるが、供給には巨額の公金が投入される。政府は一丸となって輸入相手国やワクチンメーカーとしっかり交渉すべきだ。[br] 厚生労働省は診療所や職場での個別接種も検討している。多くの人が安心して手軽に接種できる環境づくりに向けた努力もしてほしい。ファイザー以外の2社のワクチン承認はこれからで、課題は山積している。[br] 接種予定のワクチンは、どれも発症予防は期待できても感染の予防を約束するものではない。接種が進んでも、感染が広がりにくくなる集団免疫は簡単にはできない。政府は感染拡大防止の切り札と期待するが「ワクチンですべて解決する」とミスリードしてはいけない。[br] 初の大集団接種を円滑に進め、同時に検査体制も拡充し医療現場の惨状を改善して適切な感染防止策を行う。政府の責務はそこにある。これから真の力量が問われる。