時評(2月12日)

何のために設けた法務・検察行政刷新会議なのか。同会議の報告書を受け、上川陽子法相は1月下旬、組織運営上の改善策を検討するプロジェクトチームを設置したが、その取り組みを見ると刷新の本気度に首をかしげたくなる。 同会議は黒川弘務元東京高検検事長.....
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 何のために設けた法務・検察行政刷新会議なのか。同会議の報告書を受け、上川陽子法相は1月下旬、組織運営上の改善策を検討するプロジェクトチームを設置したが、その取り組みを見ると刷新の本気度に首をかしげたくなる。[br][br] 同会議は黒川弘務元東京高検検事長の賭けマージャンなどで揺らいだ信頼を取り戻そうと森雅子前法相が設置した。本来なら教訓を生かし新たな制度作りに取り組むべきだった。[br][br] しかし昨年12月に提出された報告書の結論は幹部研修の強化など当たり前の提言ばかり。あとは個別意見の列記だけだ。検察官の定年延長や黒川元検事長の問題には踏み込まず、森前法相が掲げた検討の3本柱に絞って意見が集約された。[br][br] 最初の柱は検察官の倫理。倫理観を高める取り組みの強化という方向性では一致したが、具体的強化策の提示はない。次の柱は法務行政の透明化。文書の保存・決裁ルールなどの見直しは今後の検討にとどまった。最後の柱は日本の刑事手続きについて国際的理解を得る方策だ。積極的な対外発信の方向性で一致したが、改革の具体化については法相に委ねた。[br][br] 3本柱は論点ずらしにほかならない。報告書に求められたスピード感は、世間の批判を早く封じ込む狙いだったようだ。検察官の定年延長を可能とする検察庁法改正案は廃案になった。しかし政権による検察首脳の恣意(しい)的人事を可能にする法案が国会へ再提出されないとも限らず、動向から目が離せない。[br][br] 設置されたプロジェクトチームの取り組み方針は報告書の3本柱を踏襲し、しかも刑事手続きの国際理解の関係は刑事局任せとした。これでは取り組みが弱くならざるを得ない。刷新が必要なのはむしろ、人事権を盾に法務・検察を意のままに動かそうとする政治の方だろう。[br][br] 高齢化などが急速に進む現状では、定年延長や働き方の改革は官民を問わず急務だ。法務・検察が刷新を達成するには、次の3点が必要だろう。[br][br] 第1は定年延長。検事総長の65歳は最高裁判事70歳に比べ早過ぎる。[br][br] 第2は国家公務員倫理法が定める禁止行為の厳格化だ。利害関係者からの金品・不動産の供与、飲食、遊技、供応接待などが該当する。独自に第三者による倫理審査会を設けるのも検討に値する。第3は、取り調べへの弁護人の立ち会いや録音・録画の全面実施など捜査の見直しだ。これらはすぐにも実現させるのが望ましい。