陸上自衛隊と米海兵隊が2015年に、沖縄県名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブに陸自の離島防衛部隊(水陸機動団)を常駐させることで極秘に合意していたことが共同通信の取材で明らかになった。[br][br] キャンプ・シュワブは米軍普天間飛行場の移設先となる辺野古の新基地と一体運用される予定だ。日米共同利用が実現すれば、陸自にとって水陸機動団の移動手段となる輸送機オスプレイの発着や水陸両用車の海自輸送艦への搭載が可能となる。[br][br] そのため、陸自は中国の海洋進出を念頭に、効果的に尖閣諸島などの離島防衛に当たることが可能になると判断。沖縄から約9千人がグアムやハワイに移転する予定の米海兵隊側にとっても、共同利用によって存在感を持ち続けたいという狙いがあるようだ。米軍と自衛隊の一体化がさらに進むことになり、米側も共同利用に積極的な姿勢を示しているという。[br][br] だが、極秘合意には数々の問題点がある。まず、陸自部隊の常駐による日米共同利用は沖縄にさらなる巨大基地の出現を意味し、負担軽減を訴え続けている県民の願いに逆行することになる。玉城デニー県知事が極秘合意について「県民感情からしても認められない」と反発したのも当然だろう。県選出の5人の野党国会議員や現地の市民団体も抗議の声を上げている。[br][br] そして何よりも問題なのは、今回の合意が防衛省全体の決定を経ておらず、文民統制(シビリアンコントロール)の原則を逸脱しているとの懸念を抱かざるを得ないことだ。同省の内部部局には「陸の独走」との批判さえあるという。[br][br] 陸自など実力部隊の具体的な配備は、国の外交・安全保障政策の一環として決めるべきことだ。中国の軍事的な脅威をいかにして外交的手段で軽減していくかといった観点も含め、政府全体による高度な政治判断に基づかなければならない。[br][br] 制服組の都合と思惑だけで部隊配備を決めるのは明らかに文民統制からの逸脱で、戦後培ってきた民主国家としての根幹を揺るがしかねない。決して許されることではない。[br][br] 加藤勝信官房長官はキャンプ・シュワブの共同利用について「合意や計画があるとは承知していない」と極秘合意を否定。岸信夫防衛相も共同利用により「水陸機動団を配備することは考えていない」と明言した。[br][br] ならば、極秘合意をはっきりと白紙に戻すとともに、政府として沖縄の基地負担軽減により真剣に取り組むべきだ。