定置網漁業で水揚げした魚を自動で仕分ける装置の実証試験が1月、八戸市第3魚市場で行われた。情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)などを活用しており、既に近隣自治体の漁協からも視察の問い合わせが寄せられている。漁業現場で人手不足は喫緊の課題であり、関係者の注目度は高い。[br][br] 装置は同市の青森県産業技術センター食品総合研究所(食総研)などが開発。今のところ40種類ほどの魚種を判別可能で、精度は90%以上という。[br] 特筆したいのはAIによる機械学習。現場でのデータを積み上げることで精度向上が見込める点だろう。実証試験の結果はおおむね良好で、浜値へのマイナスの影響もなかったが、確かに判別し切れない魚体もあった。関係機関は今後も試験を重ねることで、さらに精度を高めていく考えだ。[br] 導入に当たってはクリアすべきハードルがまだ多い。実際に使用した市場関係者の声を聞くと、まず機材を設置する段階で相応の人手が必要なほか、メンテナンスの対応なども想定されるという。国補助の3カ年事業(2018~20年度)で装置自体はほぼ完成の域に達しており、21年度以降は運用上のさらなる工夫に加え、普及に向けた取り組みも重要になるだろう。[br] 国内の産業全般の傾向と同様、漁業も少子高齢化などを背景に人手不足が年々深刻化。農業に比べると、機械化が遅れ気味の分野だとも言われている。漁法別でも、定置網をはじめとする小型船は大中型船に比べ労働集約型の傾向が強いだけに、生産性向上のニーズもとりわけ高いはずだ。[br] 八戸港では4月から新たに、小中野地区の旧市第2魚市場跡地に建設した荷さばき施設D棟の運用が始まる。主に鮮魚を取り扱う予定で、定置網船や沿岸操業の小型船、中小型底引き網船などの水揚げ、販売に対応することになる。[br] 同港の卸売業務は昨年6月に従前の2者体制から株式会社八戸魚市場単独に移行して以降、同社の負担が増しており、D棟開場に伴う人繰りの問題がクローズアップされている。装置の導入の是非はまだ先の話ではあるが、作業効率の工夫は待ったなしの状況といえよう。[br] 長引く不漁や不安定な漁模様など、漁業環境は年を追うごとに厳しさを増しているように思えてならない。省力化にとどまらず「水産・八戸」復活に向け、あらゆる局面で変化に対応できる柔軟性が問われているのではないか。