東京証券取引所に上場している株式の最大の株主が日銀になった。ニッセイ基礎研究所によると、昨年12月時点で東証1部の株式の約7%を日銀が保有、その時価総額は46兆8千億円になった。[br] 日銀が金融政策の一環として購入している大半の株式は、銘柄をまとめて運用する東証株価指数(TOPIX)連動型の上場投資信託(ETF)というもので、東証1部の全銘柄を機械的に購入している。[br] 欧米の中央銀行は社債は保有しても株式を持っている例はなく、いつまでこの買い姿勢を続けるのか議論が起きている。日銀は買い一辺倒で、これまでに売却したことは一度もない。[br] 買い始めた2010年当時は年間の購入上限額は4500億円だったが、黒田東彦総裁が就任した13年4月には1兆円ペースに拡大。14年10月末には3兆円に、16年7月には6兆円に急拡大した。昨年3月には新型コロナウイルス感染による株価急落を受けた金融政策決定会合で、買い入れ上限枠を12兆円にまで拡大可能にした。[br] 日経平均株価が一時1万6千円台まで下げた同月には約1兆5千億円ものETFを集中的に購入、20年は1年間で6兆8450億円を買った。ここまで買い増した結果、これまで東証の最大株主だった年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の保有株を抜いた。[br] 確かに日銀が買い支えることで、株価の急落を防いだ効果はあったかもしれない。だが、保有株がここまで増えてくると、株式市場の自由な価格変動をゆがめているのではないかという指摘が専門家の間でなされてきた。しかも昨年末からは東証の株価は約30年ぶりの高い水準になっており、日銀が買い続ける理由は薄れてきている。[br] 黒田総裁は27日の参院予算委員会でETFの含み益が12兆~13兆円に上るとの試算を明らかにし、ETFは買い続ける方針を表明した。だが、日銀OBや国会では大量購入に対して懐疑的な意見が聞かれる。ニッセイ基礎研の井出真吾上席研究員は「購入をやめることは難しいだろうが、少なくとも購入額をできるだけ減らして、売却をする『出口戦略』のシナリオを示してほしい」と指摘する。[br] 中央銀行は本来的に株式市場に介入すべきものではないはずだ。日銀は今後、買い入れ姿勢を見直すともみられるが、市場のあるべき価格形成機能を取り戻すためにも早い時点でこのETF買い入れから手を引き、売却時期を探る必要がある。