時評(1月22日)

米国のバイデン新政権が発足した。トランプ前大統領が選挙の敗北を最後まで認めず、議会襲撃事件など政治的混乱を経た上での誕生だ。新政権の最重要テーマの一つはバイデン氏が就任演説で訴えたように、分断深まる社会の「融和」と「結束」であるのは間違いな.....
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 米国のバイデン新政権が発足した。トランプ前大統領が選挙の敗北を最後まで認めず、議会襲撃事件など政治的混乱を経た上での誕生だ。新政権の最重要テーマの一つはバイデン氏が就任演説で訴えたように、分断深まる社会の「融和」と「結束」であるのは間違いない。[br] だが、課題は内政面だけではない。前政権の「米国第一主義」で打撃を受けた世界秩序の回復も急務だ。新大統領には超大国の指導者として世界を再びけん引していくよう強く求めたい。[br] 新政権が直面している危機として挙げているのはコロナ禍、経済の悪化、気候変動、人種問題の四つだ。バイデン氏は最初の10日間に大統領令を連発し、「負の遺産」と見なす前政権の政策を一掃したい考えだ。[br] 同氏は早くも就任直後、連邦政府庁舎でのマスクの義務化、地球温暖化対策の枠組み「パリ協定」への復帰などの関連文書に署名した。[br] 新政権の喫緊の課題はコロナ禍対策だ。米国の感染者は2400万人、死者は40万人を超え、世界最悪の状況だ。トランプ氏が経済を優先、科学者の助言を軽視し、対応が後手に回ったことが大きな要因だ。[br] バイデン氏はすでに大規模な追加経済対策案を議会に提出、今後もコロナ対策の関連物資調達の強化や、「100日間で1億人へのワクチン接種」などを実施する計画だ。[br] 同氏はこうした政策を打ち出しながら、徐々にトランプ支持派との溝を埋めていきたい意向だが、国を二分する対立の解消は一朝一夕では実現しない。上院ではトランプ氏の弾劾裁判も行われる予定で、分断がさらに広がりかねない。[br] 外交分野で望みたいのは、トランプ氏の米国第一主義で揺れ動いた国際秩序を立て直すため、強いイニシアチブで世界を引っ張ってほしいということだ。[br] 同氏は自国の損得を最優先にし、同盟国を軽視した上、「パリ協定」やイラン核合意、世界保健機関(WHO)などからの離脱を宣言して孤立主義に傾斜、米国の国際的な地位の低下を招いた。バイデン氏は国際協調路線への転換を明らかにしており、極度に悪化した米中関係の改善などに期待したい。[br] 容認し難いのは、前政権がキューバをテロ支援国家に再指定したように、土壇場でバイデン政権の外交に足かせをはめる決定を行ったことだろう。新政権の閣僚の承認を担う上院は同氏が国際的な指導力を発揮できるよう、速やかに審議を進めなければならない。