時評(1月18日)

20日に就任するバイデン次期米大統領は、直面する優先課題として新型コロナウイルス感染症の収束とともに、経済の立て直しを挙げた。トランプ政権が引き起こした経済混乱は、ばらまき財政にコロナ禍が加わり、リーマン・ショック時を上回る景気後退や財政赤.....
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 20日に就任するバイデン次期米大統領は、直面する優先課題として新型コロナウイルス感染症の収束とともに、経済の立て直しを挙げた。トランプ政権が引き起こした経済混乱は、ばらまき財政にコロナ禍が加わり、リーマン・ショック時を上回る景気後退や財政赤字を招いた。不安定な経済下の株高先行などで所得格差も一段と拡大した。[br][br] 対外的には米中経済関係の対立激化に加え、同盟国との貿易でもぎくしゃくした関係に陥り、世界は保護貿易的色彩が強まった。内外ともに「失われた4年間」の修復は容易ではないが、一刻も早く分断を生んだ所得格差の是正や国際協調の再構築に着手してほしい。[br][br] 2020会計年度(19年10月~20年9月)の財政赤字は、トランプ政権での支持率優先の大規模減税とコロナ対策の歳出急増が加わり、リーマン・ショック後の2倍超の330兆円と過去最大になった。新政権は200兆円規模の経済対策を追加するため赤字はさらに膨らむが、金融緩和策の継続とともに、当面はコロナ対策に全力を注ぐ。[br][br] 一方でバイデン氏は法人税や富裕層の増税と最低賃金の引き上げを表明。所得再配分の強化策による中間層の立て直しで分断の修復と財政赤字是正を図ることが大きな課題となる。[br][br] 同氏が選挙戦で強調したのは、対立から国際協調への転換だ。トランプ政権で次々と離脱した国際的な枠組みへの復帰が急務となる。最優先の懸案は温室効果ガスの排出削減だ。[br][br] 新政権は発足と同時に、パリ協定に再加盟すると公約した。ガス排出大国の責務として、米中が協力してパリ協定の推進役を果たすべきだ。さらにオバマ前政権が主導して創設した環太平洋連携協定(TPP)に復帰すれば、国際協調へ向かう象徴となろう。[br][br] 一筋縄でいかないのが米中関係だ。強制的な技術移転や国家的産業保護という中国の政策に対し、トランプ政権は力ずくの制裁関税で対応、中国の報復を呼んだ。通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)に対する米国の半導体輸出規制に対抗して、中国も安全保障関連の輸出管理法を施行するなど、攻防は激化の一途をたどる。新政権は同盟国との協調を基に強硬路線を貫く構えだ。通信技術はデジタル化する国家の安全保障に関わるだけに、妥協は容易でない。[br][br] 日本にとっては最大の貿易相手同士の対立はしわ寄せが大きいが、双方がルールに基づく交渉に戻り、摩擦リスクが軽減するよう願いたい。