岩手県内で昨年11月以降、新型コロナウイルス感染患者の死亡例が相次いだ。今月15日までの死者の累計は25人。患者全体に対する死者の割合は5%を超えており、全国的に見ても高い数字となっている。[br] 県内では、昨年11月下旬に初めての死者が発生。12月に入って急増し、12月中旬に10人、同下旬には20人を突破した。隣県・青森の8人(今月15日現在)と比べても、段違いに多いことがうかがえる。[br] 特徴的なのは、死者のほとんどが何らかの基礎疾患を抱えていた上に、65歳以上の高齢者だったことだ。[br] 県が12月31日現在でまとめた死者24人の状況によると、全員にがんや慢性腎臓病、糖尿病、高血圧などの基礎疾患があった。年代別では80代10人、70代7人、90歳以上5人なのに対し、60歳未満と60代は各1人にとどまっており、高齢であるほど死亡リスクが高まっている様子が見て取れる。[br] 死者急増の要因として、県は同時期に医療機関や福祉施設でクラスター(感染者集団)が続発したことを挙げる。一方で、具体的に何の事例で亡くなったかについては公表していない。[br] ただ、大きな要因として考えられるのが、雫石町の鶯宿温泉病院で発生したクラスターだ。これまでに、入院患者や医療従事者ら100人超の感染が確認されている。[br] 特に入院患者は、寝たきりなど日常の基本動作が困難な高齢者が多く、職員との接触も濃密だったとされる。こうした事情も重なって感染が大規模に拡大し、リスクの高い高齢の入院患者に広がったとみられる。[br] 県北地方では11月下旬、洋野町のデイサービス施設で、県内の福祉施設では初となるクラスターが発生。施設の利用者や職員ら8人に感染が拡大したが、既に沈静化している。[br] 県医療政策室は、「クラスターが発生した医療機関や福祉施設にウイルスが侵入し、重症化リスクの高い基礎疾患のある高齢者に感染が広がった」と分析。接触者の検査を何度も実施したり、医師や看護師を通常より多く配置したりするなどして、感染拡大と重症化を抑えていく考えを示している。[br] 年明け以降の県内の死者は1人にとどまっているものの、年末年始の帰省や移動に起因するとみられる感染確認が相次いでいる。重症化リスクの高い人たちに感染が広がれば、命に直結する問題になることをそれぞれが肝に銘じ、いま一度感染対策を徹底したい。