時評(1月15日)

韓国の司法がまたも日韓関係の一層の悪化をもたらしかねない判決を出した。ソウル中央地裁は、旧日本軍の元従軍慰安婦の女性12人が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、請求通り1人当たり1億ウォン(約950万円)の支払いを命じた。 裁判の焦点は、国家.....
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 韓国の司法がまたも日韓関係の一層の悪化をもたらしかねない判決を出した。ソウル中央地裁は、旧日本軍の元従軍慰安婦の女性12人が日本政府に損害賠償を求めた訴訟で、請求通り1人当たり1億ウォン(約950万円)の支払いを命じた。[br] 裁判の焦点は、国家は外国の裁判権に服さないとされる国際法上の「主権免除」を認めるかどうかだった。日本はこの原則を盾に訴訟への参加を拒んだ。[br] 地裁判決は日本政府の行為が「計画的、組織的、広範囲に行われた反人道的犯罪行為で、国際規範に違反した」と指摘。慰安婦動員は「反人道的犯罪行為」で主権免除は適用できないと判断した。菅義偉首相は主権免除の原則を踏まえ「国際法上、主権国家は他国の裁判権に服さない。これは決まりだ。この訴訟は却下されるべきだ」と主張した。[br] また元慰安婦問題は「1965年の日韓請求権協定で完全かつ最終的に解決済みだ」と強調し「韓国政府として、国際法上の違反を是正する措置を取ることを強く求めたい」とした。[br] 主権免除を主張してきた日本政府側は、控訴しない方針だ。このため政府に元従軍慰安婦らへの損害賠償支払いを命じた地裁の判決によって、日本政府の資産差し押さえが法的には可能になる。[br] 元従軍慰安婦問題を巡っては、日本側が95年に元慰安婦に償い金を渡す「アジア女性基金」を発足させ、歴代首相からの「おわびの手紙」が元慰安婦に手渡されてきた。[br] 2015年には、日韓両政府が元慰安婦問題の「最終的な解決」で合意し、元慰安婦の支援を担う財団が韓国で発足し、日本政府が10億円拠出した。韓国の判決は、こうした日韓間の外交的な努力を図ってきたことを考慮したとみられず、残念だ。[br] 文在寅大統領も、前政権でなされた日韓合意を「合意では慰安婦問題が解決できない」と表明し、財団を解散させた。[br] 日韓関係が最悪の状況に陥るきっかけとなったのは、18年に元徴用工訴訟で日本の民間企業に賠償を命じた韓国最高裁判決だった。今回の判決で日韓関係は後戻りできないほどに険悪化しかねないだろう。司法判断により日韓がそうした関係に陥ることは、望ましくない。一衣帯水の隣人である日韓は、安全保障や経済などで協力し合わなければならないからだ。[br] 日韓間に横たわる歴史問題は解決が難しい。日韓の両政府が粘り強く外交努力を重ね、解決していくべきだ。