天鐘(1月14日)

七福神にはそれぞれ地元があるらしい。多くはインドや中国の出身。生まれが日本なのは恵比寿(えびす)さまただ一人である。右に釣りざおを担ぎ、左にタイを抱える。ふくよかでニコニコ顔。御利益がにじみ出るようだ▼その姿が示す通りに、古くは大漁追福をも.....
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 七福神にはそれぞれ地元があるらしい。多くはインドや中国の出身。生まれが日本なのは恵比寿(えびす)さまただ一人である。右に釣りざおを担ぎ、左にタイを抱える。ふくよかでニコニコ顔。御利益がにじみ出るようだ▼その姿が示す通りに、古くは大漁追福をもたらす海の神とされた。時代を経て商売繁盛、五穀豊穣(ほうじょう)も象徴する存在となる。そんな福の神に感謝するのが「えびす講」。新年の今の時期や神無月の秋に各地で行われる▼神棚にお供えするのは、やはり定番のタイ。しかし三陸沿岸に限ってはドンコなのだという。水圧の変化によって口から飛び出た胃袋が、がま口に見えることから「財布魚」とも。実は縁起物の大衆魚である▼正式名は「エゾイソアイナメ」。深海魚ならではのボテッとした風体だから、地方名の響きの方がしっくりくる。たたき、逆さ焼き、煮付けと万能。どれも絶品のうまさだが、寒い冬は汁でいただきたい▼いずれも味の決め手は肝である。海の底は餌が少ないので、栄養を脂肪に変えて肝臓に蓄える。だからホロリとほどける白身と相まって、滋味があふれる。アンコウにも引けを取らない「海のフォアグラ」▼見てくれが悪くても、小骨が多くて敬遠されがちでも、コクと出汁(だし)が体に染み渡る。豊かな地魚に、個性も魅力の一つと気付かされる。ドンコに負けないくらいに、味のある人間になりたいものである。