天鐘(1月6日)

今年の一番マグロは2084万円。コロナによる外食需要の落ち込みもあって昨年の10分の1だった。かつての3億円に比べれば随分と控え目だが、十分に景気がいい数字。大間が誇るブランドの力は健在である▼津軽海峡は三方の潮が入り組む海流の交差点。プラ.....
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 今年の一番マグロは2084万円。コロナによる外食需要の落ち込みもあって昨年の10分の1だった。かつての3億円に比べれば随分と控え目だが、十分に景気がいい数字。大間が誇るブランドの力は健在である▼津軽海峡は三方の潮が入り組む海流の交差点。プランクトンが豊富でクロマグロの餌となる魚が多い。流れが速く身が締まる。海温が下がれば脂が乗ってくる。「黒いダイヤ」の称号には理由がある▼マグロが大間の代名詞となったのは近年。北前船の時代は干しアワビだった。干しナマコ、フカヒレとともに「俵物」と呼ばれた交易品は、西回りで長崎を経て中国へ。現地では今も高級食材として重宝される▼生はコリコリの食感が魅力。高価で憧れるすしネタだが、味わえるのは2080年までだという。ホタテは68年、サケとイクラは49年。一昨年に東京・銀座の有名店が“最後の予約”を受け付けて話題になった▼バイオ関連企業の試み。生態系の破壊によって近海物が消滅する日を予測し、危機感を訴えた。口の中でとろけるクロマグロもまた枯渇が指摘される。新春恒例の初競りに、海洋と水産資源の保全という難題を考える▼魚がおいしいから「鮨」、喜びや祝いを意味する「寿司」とも。豊かな恵みを象徴する縁起物である。より一層ありがたく思えてくる。なじみ深い日本の食文化そのもの。遠い存在にはしたくない。