天鐘(12月29日)

この時季、朝の出勤はいつも新井田川の白鳥を眺めながら車を走らせる。寒くなると、いつも同じ所にやってくる渡り鳥。毎年、川面に初めてその姿を見つけたとき、冬の訪れを実感する▼動物や草花の息遣いに人は季節の移ろいを感じてきた。古代中国で生まれた二.....
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 この時季、朝の出勤はいつも新井田川の白鳥を眺めながら車を走らせる。寒くなると、いつも同じ所にやってくる渡り鳥。毎年、川面に初めてその姿を見つけたとき、冬の訪れを実感する▼動物や草花の息遣いに人は季節の移ろいを感じてきた。古代中国で生まれた二十四節気、これを5日ごとに分けた七十二候。俳句の季語にもつながるそれらには、多くの動植物が登場する▼例えば、今ごろは「麋角解」(さわしかのつのおつる)。鹿の角が抜け落ちる時季だという。年が明ければ「雪下出麦」(ゆきわたりてむぎのびる)。雪の下に小さな麦の芽。繊細な四季の移り変わりを、自然はそっと教えてくれる▼気象庁で67年間続く、季節の変化を示す動植物の観測が、来年から大幅に縮小される。ウグイスの初鳴きやカエルの初見など、動物は全廃。植物も、桜の開花など数項目だけになるらしい▼聞けば、環境の変化で観測自体が難しくなったのが理由という。ならば一層、自然に目を凝らす必要があると思うのだが、そこまでは手が回らぬということか。天気予報の中で紹介される小さな季節の話題が消えてしまうのは寂しい▼八戸測候所が無人化されたのは2007年。それ以後、民間の有志が毎年、桜の観測を続けている。ただでさえコロナで季節感に乏しい昨今である。確かな四季を感じ取るために、まずは自らの耳目を研ぎ澄ましたい。