【連載・世界のJOMONへ】第5部(3)縄文を海外へ

青森県内在住の米国人を対象に行われた縄文遺跡群モニターツアー=10月中旬、青森市
青森県内在住の米国人を対象に行われた縄文遺跡群モニターツアー=10月中旬、青森市
「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産に登録されれば、国内のみならず海外での知名度向上が想定される。いざ海外から観光客が訪れた場合、万全の態勢で迎えたい―。青森県内では既に、国内外からの観光客を見据えたツアー造成に取り組む動きが出始めてい.....
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 「北海道・北東北の縄文遺跡群」が世界遺産に登録されれば、国内のみならず海外での知名度向上が想定される。いざ海外から観光客が訪れた場合、万全の態勢で迎えたい―。青森県内では既に、国内外からの観光客を見据えたツアー造成に取り組む動きが出始めている。[br][br] 10月中旬、縄文遺跡群の構成資産の一つで、環状列石で有名な青森市の小牧野遺跡に、米国出身で県内在住の外国語指導助手(ALT)4人が集まった。県が主催する縄文遺跡群モニターツアーの参加者で、「縄文時代の人々の暮らしと祈りに触れる旅」をテーマに、1日かけて小牧野や三内丸山遺跡を回った。縄文人がクリを食べていたとされることにちなみ、市内の農園でクリの収穫と試食を体験する場面もあった。[br][br] ツアーは米国や欧州の観光客を想定して企画。漆製品や土器、復元された竪穴の建物や集落の風景に心引かれる人が多く、アジア圏の観光客よりも縄文への関心が高いという。[br][br] 一方、現時点で欧州などでは、縄文遺跡群の知名度は低い。モニターツアーを企画した県観光企画課の一戸学主査は「縄文遺跡群が世界遺産に登録されたとき、海外に住む人が『JOMON』と検索するかもしれない。その際にツアーがたくさん表示されれば、訪問しやすくなるはず」と狙いを語る。[br][br] 米国や欧州の観光客は個人旅行が多いため、少人数で参加でき、街歩きや遺跡巡りをしながらガイドが案内してくれる県内発着ツアーの造成に着目。「印象に残るのは人と人との思い出」と強調する一戸主査らは、モニターツアーに現地の人との触れ合いや物作り体験などを盛り込んだ。[br][br] 参加したニコール・マクネヴィンさん(25)は、農園で地元の人と一緒にクリ拾いをしたことが印象に残ったようで、「ただ歴史を学ぶだけでなく、地域の人との触れ合いが楽しい。海外から来た人にとって、こういう体験はとても大切」と満足げだった。[br][br] ツアーでガイドを務めた「青森Michinoku通訳ガイドの会」所属の通訳案内士・栗橋和子さん(56)も「最近のツアーは、旅先での買い物より体験を重視する傾向に移っている」と指摘。環状列石に使った石を運んできたとされる川のせせらぎを聞いてもらったり、環状列石での祈りを問い掛けたりして、縄文人の暮らしを追体験し、想像できるように工夫している。[br][br] ただ、一戸主査は「遺跡ごとにイベントを企画するなど頑張ってはいるが、“群”としてまとまった取り組みが弱い」と指摘。「県が各遺跡の取り組みをまとめ、縄文イコール青森、という認識が広がってほしい。そして、遺跡を訪れたらできるだけ長く、広く県内にとどまってもらいたい」と力を込める。 青森県内在住の米国人を対象に行われた縄文遺跡群モニターツアー=10月中旬、青森市