時評(12月18日)

英国と欧州連合(EU)は自由貿易協定(FTA)締結を巡り、13日までに結論を出すとの方針から交渉継続に転換した。だが、年末の交渉期限まで残りはわずか2週間。双方は、最後まで交渉妥結に向けて全力を尽くさなければいけない。 2016年の国民投票.....
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 英国と欧州連合(EU)は自由貿易協定(FTA)締結を巡り、13日までに結論を出すとの方針から交渉継続に転換した。だが、年末の交渉期限まで残りはわずか2週間。双方は、最後まで交渉妥結に向けて全力を尽くさなければいけない。[br][br] 2016年の国民投票でEU離脱を決めた英国は、EUと合意した離脱協定に基づき今年1月末にEUから離脱し、3月からFTA交渉に臨んだ。しかし、難題の「英近海でのEU側漁業権」をはじめ「英EU企業の競争条件の公平性」や「協定違反に対する措置」など溝が深く、合意の達成は見通せない。[br][br] ジョンソン英首相とEUのフォンデアライエン欧州委員長は今月2回電話会談し、対面協議もしたが打開できなかった。[br][br] FTA交渉が年内に妥結しなければ年明けとともに英EU間の輸出入物品に高い関税が課され、国境審査手続きの復活などで食品や医薬品などの物流が停滞。国民の生活と経済に深刻な影響は避けられない。産業界も多大な損失を警告する「合意なき離脱」は何としても避けなければいけない。[br][br] 両首脳は合意達成へ「一層の努力をする責任」を強調し、ジョンソン氏は「英国は交渉から降りない」と表明した。だが、楽観はできない。[br][br] 会談後、ジョンソン氏はEU側の主張に対して、離脱後もEUの法律を順守するよう英国に要求していると批判。EU側が譲歩しなければ「(現時点でFTAを結んでいない)EUとオーストラリアの関係のようになる可能性が高い」とし、それでも英国は「力強く繁栄できる」と豪語した。本音では妥結なしの離脱強行も辞さない構えであることを示唆したと言える。[br][br] ジョンソン氏はEU離脱交渉の時も「合意なき離脱」の切り札として、昨年9月から約1カ月間、議会を閉会とする奇策を強行した。今年9月には発効済みのEU離脱協定を英国に有利な形に修正する国内法案を提出し、EUの反発を買った。[br][br] 離脱の立役者とされるジョンソン氏が、どこまでEUに譲歩する用意があるのか不明なのが最大の懸念。交渉が決裂した場合に備え、英EUは年明け以降の貿易や交通の破綻を緊急避難的に防ぐ措置の準備を始めた。[br][br] 英国はじめ欧州は現在、新型コロナウイルスの第2波が急速に広がり、食料店閉鎖や市民の移動制限など厳しい規制下でクリスマスと新年を迎える。国民の不安を最小限にとどめ安心させるためにも、英EU双方の賢明な決断を期待したい。