関西電力大飯原発3、4号機の設置許可を取り消す判決を大阪地裁が下した。原発の耐震性判断の根幹となる「基準地震動」を巡る原子力規制委員会の審査自体を「看過し難い過誤、欠落がある」と断じた。[br] 東京電力福島第1原発事故の後に策定された新規制基準。その基準による設置許可判断が初めて否定された。規制委の姿勢に疑問符を付けたこの判決は極めて重い。規制委は判決内容と正面から向き合い、規制の在り方や審査内容に対する疑義に正面から答えなければならない。[br] 世界を震撼(しんかん)させた福島第1原発事故を経験したこの国では重大事故の防止が最優先だ。政府は新規制基準を「世界一厳しい」と称して再稼働のよりどころにしてきた。そして原発を巡る安全性判断を規制委に丸投げしてきた。[br] 今回の司法判断で最も注目すべきは、その規制委が新規制基準に基づく審査ガイドを検討しなかったと判断されたことだ。[br] 関電は大飯原発3、4号機周辺の断層の長さや幅を推定し、最大の揺れとして基準地震動を定めた。判決は、その算出根拠が過去の地震データから導き出した平均値であり、平均値から上振れするリスクを考慮した「ばらつき」を上乗せする検討をしていないと指摘。規制委も審査ガイドに「ばらつきも考慮する必要がある」との条項があるのに検討しなかったと厳しく指弾したのだ。[br] 関電は政府と協議した上で控訴するとみられ、判決の効力は直ちには生じない。これまで原発の運転を差し止めたり、設置許可を取り消した判決はいくつもあるが、上級審で覆されたり、係争中だったりで、確定した例はない。[br] だが、今回の判決を軽んじていけない。政府が再稼働を期待する原発の多くは大飯原発と同様の計算方式で基準地震動が算出されているからだ。関電や政府は控訴審を待たずに疑義に答えるべきだろう。そうでなければ原発を抱える地元の不安は拭えない。[br] 現在、六ケ所村の再処理工場の事業許可取り消しを求める行政訴訟のほか、各地の原発の安全性を巡る裁判が係争中だ。今後の司法判断に与える影響も大きい。政府は2050年までに温室効果ガス排出量ゼロにするとの目標を掲げた。再生可能エネルギー導入を加速させるとする一方、原発の活用も続けるという。今回の判決は規制委審査だけでなく、政府の原子力行政の在り方そのものも問うている。そう受け止めるべきだ。