天鐘(12月2日)

コメディアンの志村けんさんが新型コロナで逝って8カ月。追悼番組を見ても未だに信じられない。「さよなら」が言えない死―。愛する人と人とを引き裂く残虐さがコロナの正体だ▼倦怠感から呼吸困難に陥って緊急入院。人工心肺を着けたがわずか13日で息を引.....
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 コメディアンの志村けんさんが新型コロナで逝って8カ月。追悼番組を見ても未だに信じられない。「さよなら」が言えない死―。愛する人と人とを引き裂く残虐さがコロナの正体だ▼倦怠感から呼吸困難に陥って緊急入院。人工心肺を着けたがわずか13日で息を引き取った。タブレット越しに声を掛けても何の反応もなかった。享年70歳。「さよなら」もなく、無念さだけが募る別れだった▼兄達さえ最期の言葉も交わせず手も握れない究極の別離だ。秋冬の第3波は65歳以上の高齢者の感染が、春夏の5・5%から13・2%と倍増以上。全体の致死率こそ減ったが、高齢者の悲しい別れが相次いでいる▼夏のコロナは「若者」と「夜の街」に取りついた。秋冬は「高齢者」と「家庭」に狙いを定め、外で感染した若者が無症状のまま家庭に持ち込み、家族にうつしてしまう―というシナリオを描いているようだ▼これではじっと息を潜めていた高齢者や疾患を持つ感染弱者は堪(たま)らない。首都圏では感染経路の4割が家庭内。一家団欒(だんらん)が感染の場となり、重症化しても看取れず最期の別れも交わせない。性悪極まりない奴らだ▼いつもなら正月の里帰りに胸躍らせる頃。コロナはそんな慎(つつ)ましい幸せを砕き、愛する人を分断する。「勝負の3週間」に、経済との両立で“ハンマー”を握る国の手に力が入らない。迷うほど敵の思う壺にはまりかねない。