天鐘(11月28日)

よく知られる落語の『長屋の花見』は、もともと上方の『貧乏花見』が江戸に移植されたもの。春爛漫(らんまん)の桜の季節。天気が良いからと、長屋の大家が、住人たちを花見に誘う▼桜は見事だが、金がない。薄めた番茶が酒代わり。卵焼きは沢庵(たくあん).....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 よく知られる落語の『長屋の花見』は、もともと上方の『貧乏花見』が江戸に移植されたもの。春爛漫(らんまん)の桜の季節。天気が良いからと、長屋の大家が、住人たちを花見に誘う▼桜は見事だが、金がない。薄めた番茶が酒代わり。卵焼きは沢庵(たくあん)だ。何とかお茶で酔おうとする男たち。理屈抜きでおかしいそのドタバタ噺(ばなし)を、ジャーナリストの鈴木隆裕さんは「話の筋などあってないようなもの」と笑う▼こちらの宴会は太っ腹だ。一人頭1万1千円分の酒肴(しゅこう)だが、会費は5千円でいいらしい。足りない分は大家持ちと言うなら、参加者は嬉(うれ)しい。だが、その主催に政治家が絡めば話もまた違ってくる▼コロナの陰に隠れていた「桜を見る会」に関する疑惑が再燃している。前夜の夕食会について、東京地検が事情を聴き始めた。国会では「補塡(ほてん)はない」と断言してきた安倍前首相を、久々にテレビが映す。さて真相はいかに▼感染症対策で大変な時期になぜ―の思いもないわけではない。安倍さんが既に職を退いたことにも関係があるのだろうか。こうなると名簿の廃棄問題も改めて気になるところ。風は再び吹きだすか▼この手の案件でよくあるのは「秘書がやりました」の決着だ。今回も同じではないかとの専門家の見立てがある。冬場に桜の狂い咲き。この話の筋立てとオチを、検察はどう描いていよう。しばし目が離せぬ「アベの花見」である。