新型コロナウイルスの感染患者の確認が全国で最も遅かった岩手県で、今月に入ってから患者が急増している。[br] 飲食店や職場に加え、高齢者施設でもクラスター(感染者集団)が発生。感染が大きく広がる中、今後は県内全域での家庭内感染や、学校でのクラスター発生なども懸念される。[br] 予兆があった。患者が初確認された7月から10月までの場合、感染源はほとんどが県外由来と推定できていたのに対し、今月からは経路が全く分からない患者が出始めていた。 [br] 県内にもウイルスが入り込み、広がっているのではないか―。県の対策本部が事態を不安視し、感染対策の徹底を呼び掛けた矢先に、盛岡市の複数の飲食店と葛巻町の盛岡中央消防署葛巻分署でクラスターの発生が確認された。[br] 特に、盛岡の飲食店「ヌッフ・デュ・パプ」のクラスターでは、店を利用した県職員や医師らの感染も次々と判明し、大規模に拡大。職場や家庭を通じ、盛岡とは距離のある久慈市や宮古市などにも飛び火した。[br] 「大きな“火の粉”が岩手に飛んできて、ついに“火事”になった」。県の担当者は県内の状況をこう例えた。宮古では現在も感染確認が相次いでいる。[br] 今月9日以降、患者が連日確認される中、21日には洋野町の90代女性の感染が判明。女性が通っていたデイサービス施設の利用者らに感染が拡大し、県内の福祉施設で初となるクラスターに発展した。27日現在、利用者3人、利用者の家族3人、施設職員、系列事業所職員の計8人の感染が判明している。[br] 以前から福祉施設でのクラスターを警戒していた県は、感染判明後、速やかに関係者の検査とウイルスの封じ込めを実施。現時点でさらなる広がりは確認されておらず、調査は一段落した。しかし、検査後に症状が現れてウイルスが検出される事例もあるため、最終接触から2週間は健康観察を続ける。[br] 10月末時点で計27人と全国最少だった県内患者は、今や200人に迫る勢いで急増。県内初の死者も確認され、状況は一変した。事態を受け、県の対策本部は24日、家庭や職場を含む全ての場での感染対策や毎日の健康確認、体調不良時の外出回避を県民に追加で呼び掛けた。[br] 常時マスクにこまめな手洗い、大人数での会食回避―。県内の状況が変わっても、これらの基本的対策がウイルスに立ち向かう最大の武器であることに変わりはない。一人一人が徹底し、この正念場を乗り切りたい。