時評(11月21日)

衆院憲法審査会が菅政権発足後初めて開催され、憲法改正の前提となる国民投票法改正案について与野党が自由討議の形で意見表明した。 同改正案は、駅や商業施設に投票所を設けるなど投票の利便性を公職選挙法とそろえる内容で、2018年6月に自民党が公明.....
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 衆院憲法審査会が菅政権発足後初めて開催され、憲法改正の前提となる国民投票法改正案について与野党が自由討議の形で意見表明した。[br] 同改正案は、駅や商業施設に投票所を設けるなど投票の利便性を公職選挙法とそろえる内容で、2018年6月に自民党が公明党や日本維新の会などと共同で衆院に提出した。憲法9条への自衛隊明記を含む4項目の改憲案をまとめている自民は、改正案を早期に成立させた上で、憲法の条文をめぐる議論に入る道筋を描いている。[br] これに対し野党第1党の立憲民主党は改正案審議の前提として、各党の資金力が国民投票の結果を左右しないため政党CM規制の強化が必要との立場だ。与党側が当初目指していた改正案の今国会成立は見通せない。[br] 改正案は国民投票の具体的手続きを定めるもので、各党の資金力の違いにより公平、公正さが損なわれない措置を施した上で成立させるべきだ。[br] しかし国民投票の手続きが定まったとしても、改憲が一気に現実味を帯びるわけではない。改憲を党是とする自民に対し、同じ与党の公明は「加憲」の立場で、とりわけ9条の改正には慎重な姿勢を崩していない。[br] 野党側でもそれぞれスタンスは異なる。立憲民主は、憲法論議自体は否定しない一方で、自民の4項目には反対しており、枝野幸男代表は、首相の衆院解散権制約を優先的に議論することを提唱している。[br] 一方、日本維新の会に加えて国民民主党も改憲論議を積極的に進めるべきだとの立場を鮮明に打ち出している。国民民主は国民投票法改正案の採決にも応じる方針を示している。[br] ただ、改正すべき具体的な条文については、自民が自衛隊の明記、立憲民主が首相の衆院解散権、維新が教育無償化や統治機構改革などと、それぞれ異なっている。各党による議論が進展する条件は整っていない。[br] より重要なのは、改憲の是非を最終的に決める国民世論の間で改憲への機運が醸成されているとは言いがたいことだ。まず各党が努めるべきは、結論を急ぐことなく、憲法改正の是非について国民の理解が深まるような議論を展開することだ。[br] 幸い菅義偉首相には、改憲に終始前のめりだった安倍晋三前首相のような執着心はないようだ。国民主権、基本的人権の尊重、平和主義という日本国憲法の普遍的な理念を守りながら、より時代に合った内容にするために何が必要なのか。各党の議論が深まることを期待したい。