天鐘(11月6日)

仕事の関係でたまにタクシーを使うことがある。便利な移動手段なのは間違いない。ただ、目的地に着くまでが、どんな時間になるのかはドライバーとの相性にもよる▼個人的には、適当に話しかけてくれる方だとうれしい。たわいもない世間話に花が咲いたりもする.....
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 仕事の関係でたまにタクシーを使うことがある。便利な移動手段なのは間違いない。ただ、目的地に着くまでが、どんな時間になるのかはドライバーとの相性にもよる▼個人的には、適当に話しかけてくれる方だとうれしい。たわいもない世間話に花が咲いたりもする。かと思えば無口な運転手さんもいて、長い間沈黙が続くケースも。まあ、それぞれの性格や好みの問題ではある▼もっとも、運転する側も客を選ぶことはできない。愚痴や不平ばかりの人もいる。タクシーの乗務経験がある作家の梁石日(ヤンソンギル)さんは「何を話しても実害がないという点で、運転手は格好の話し相手になる」と言う▼夜中に千鳥足で乗り込む酔客となれば、苦労も多い。行き先もまともに言えないお客に往生したという話をよく聞いた。繰り言に一つ一つ相づちを打ちながら、「これも仕事」と割り切るしかない。思えばつらい稼業である▼コロナ禍の折、都内では正当な理由がなくマスクをしない客の乗車は拒否できるようになったそうだ。口を覆わぬせきやくしゃみ、大声での会話を、ひたすら我慢してきた運転席の大変さを思う▼しばしの間、密室で過ごす者同士。小さな布一つで互いに安心できれば、それに越したことはない。それにしても昔、あるドライバーは「夜にマスクをして乗ってくる客が怖い」と言っていた。これもまた、新しい生活様式ということか。