天鐘(11月4日)

カタツムリの右の角には蛮(ばん)の国、左の角には触(しょく)の国。領地を巡る戦いは15日間におよび、数万人もの死者が出た。戦国時代の中国。ある賢者は作り話を引き合いに、不毛な争いを避けるよう大国の王を諭した▼大局的に見ると、小さなもの同士が.....
有料会員に登録すれば記事全文をお読みになれます。デーリー東北のご購読者は無料で会員登録できます。
ログインの方はこちら
新規会員登録の方はこちら
お気に入り登録
週間記事ランキング
 カタツムリの右の角には蛮(ばん)の国、左の角には触(しょく)の国。領地を巡る戦いは15日間におよび、数万人もの死者が出た。戦国時代の中国。ある賢者は作り話を引き合いに、不毛な争いを避けるよう大国の王を諭した▼大局的に見ると、小さなもの同士が取るに足らない狭い所でいがみ合っている。故事成語の「蝸牛角上(かぎゅうかくじょう)の争い」は『荘子』に登場する寓話(ぐうわ)から生まれた。見苦しく、つまらない争いごとを指す▼バブル景気の頃、大阪府と大阪市は超高層ビルの建設を計画。関西一の高さ(当時)を競って到達したのが256メートル。痛み分けのはずが、実測では10センチの差があったという。多額の税金を投入して完成した両者は後に経営難に陥った▼松井一郎市長の熱弁に接したことがある。かの逸話を「府市合わせ(不幸せ)」の象徴とし、二重行政の解消を強調。その表情は自信に満ちていたが、「大阪都構想」は2度目の住民投票も僅差で否決に▼府と市の連携で一定の改革が進んだ。故に市の解体は求めず、現状維持へ意識が傾いたのだろうか。行政が効率化を唱え、住民は変化への不安を訴える―。かつて平成の大合併で経験した構図にも似ている▼北奥羽地方で市町村合併がピークを迎えたのは15年ほど前。行政サービスと暮らし向きの現状はどうだろう。成否の違いこそあれ、合併も都構想も「目的ではなく手段」。無論、不断の努力が求められる。