青森県南地方の自治体などで10月、災害の発生を想定し、新型コロナウイルス感染症対策に配慮した避難所の開設・運営訓練が行われた。不特定多数が集まる避難所で、住民の命と安全を守ることと感染対策を両立する運営の検討は、喫緊の課題だ。早期に問題点を洗い出し、万全の態勢を整えてほしい。[br] 感染対策を重視し、大勢を受け入れる避難所を運営する上での必須事項は、「ウイルスの侵入阻止」「衛生管理の徹底」「空間、距離の確保」。具体的には▽受け付け時の入念な健康観察▽健康に不安のある人らを収容する個別スペースの設置▽空間確保や感染リスク低減に向けた間仕切り、簡易テントなどの配置―といった対応が取られる。[br] 受け付け時には避難者への詳細な聞き取りなどが求められる。例えば三沢市の訓練では、身近な人が感染し保健所から自宅に待機するよう指示されている―と避難者が申告する例を想定。他者と別の導線で避難所に受け入れた。ただ、混乱した状況下では、このような情報の受け渡しがうまくいかないケースも起こり得るだろう。[br] 個別状況の的確な把握は重要だが、入場待ちに長い時間がかかり、対応する人員が不足する恐れも。大勢が距離を取って並ぶと列が長くなり、冬場は身体的負担も増すため、迅速な対応が求められる。避難者が伝えるべきことを待機中に記入できるチェックシートを用意するほか、補助員として住民の協力が得られるように備えたい。[br] 避難所内の空間や距離を確保することで、従来より収容できる人数が減るのも課題だ。新型コロナ対策を踏まえた国の方針にのっとれば、同市では指定避難所17カ所で収容できる人数が県に届けている数より1万人減ってしまう。このため避難所とする学校の空き教室などを活用し、対応する方針だ。[br] 想定より多くの人が避難所に来ることを見越し、空間を確保する余裕があるかどうかを検証しておきたい。避難を求めてきた人を受け入れられない事態だけは、避けなければならない。[br] 訓練ではあまり想定されていないが、感染を懸念して避難しないケースもあるだろう。さまざまな事態への対処を考えておくことも必要だ。[br] 自治体は日頃から対応能力の向上に努めるべきだ。一方、コロナ禍の初動対応は職員だけでは手が足りず、住民との連携が欠かせない。感染への懸念から大規模な共同訓練の実施は難しいが、意識と情報を共有し態勢を見直しておきたい。