時評(10月31日)

菅義偉首相の初めての所信表明演説を受けた衆参両院の代表質問が行われ、各党が首相の考えをただした。 首相答弁の多くは、従来の政府方針や対応をまとめた原稿の読み上げに終始。「国民のために働く内閣」と実務重視の姿勢を打ち出したこともあり、あえて国.....
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 菅義偉首相の初めての所信表明演説を受けた衆参両院の代表質問が行われ、各党が首相の考えをただした。[br][br] 首相答弁の多くは、従来の政府方針や対応をまとめた原稿の読み上げに終始。「国民のために働く内閣」と実務重視の姿勢を打ち出したこともあり、あえて国家ビジョンといった理念に距離を置く態度を貫いたと言えるが、物足りなさが残る。今後の衆参予算委員会などの論戦では、より深い説明を求めたい。[br][br] 与野党の最大の対立点となったのは日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題だ。立憲民主党の枝野幸男代表が「推薦に基づいて首相が任命する」と規定した日本学術会議法に違反していると追及したのに対し、首相は「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」と突っぱねた。これは「政府が行うのは形式的任命にすぎない」としたこれまでの国会答弁と明らかに矛盾する。[br][br] さらに、首相は「民間出身者や若手が少なく、出身や大学に偏りがある」などを挙げ、「多様性を念頭に判断した」と強調したが、共産党の志位和夫委員長から拒否された6人に女性や50代前半の学者が含まれている点を指摘されると、「個々人の任命理由については答えを差し控える」と言及を避けた。[br][br] 「多様性」を根拠にするならば、もっと説得力のある説明をしなければならない。学問への国家権力の介入だと学界などの懸念が広がる事態を招いただけに、それを払拭(ふっしょく)するためにも、首相は6人の任命を拒んだ理由を具体的に明らかにすべきである。[br][br] 衆院議員の任期が1年を切っているとあって、野党は政権への対決姿勢とともに、次期衆院選をにらみ自党の基本政策や政治姿勢をアピールしたかったようだ。[br][br] 菅首相が「自助・共助・公助、そして絆」を掲げているのに対し、立民の枝野氏は「目先の効率化だけにとらわれず、政治が責任を持って支え合いの役割を果たす共生社会の実現」を訴えた。ただ、野党側が「大局的なビジョン」を示すよう求めたものの、首相は「国民から信頼される政治を目指す」と述べるにとどまった。[br][br] 代表質問は、質問者と答弁者がそれぞれ“一方通行”になりがちだ。週明けから始まる一問一答の予算委員会では、骨太の論戦を繰り広げ、前政権時代に失墜した国会の権威と役割を取り戻してもらいたい。まず、学術会議問題などで、納得できる説明を尽くすことが大前提となる。