時評(10月29日)

「核なき世界」を目指す核兵器禁止条約が来年1月、国際法として発効することが決まった。条約発効に必要な50カ国・地域が批准、初めて核兵器が違法とされる。だが米国、ロシア、中国など核保有国は条約に参加していない。日本など米国の「核の傘」に依存す.....
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 「核なき世界」を目指す核兵器禁止条約が来年1月、国際法として発効することが決まった。条約発効に必要な50カ国・地域が批准、初めて核兵器が違法とされる。だが米国、ロシア、中国など核保有国は条約に参加していない。日本など米国の「核の傘」に依存する国も参加せず、菅義偉首相は臨時国会の所信表明演説で条約や核廃絶には言及しなかった。[br][br] 日本政府は核保有国が参加しない条約の実効性に疑問を呈するが、世界は核の脅威にさらされているのが現実だ。条約発効に向け、広島、長崎の被爆者らを中心に唯一の戦争被爆国である日本の姿勢を問い、参加を促す声が高まっている。政府は世界的な核廃絶への願いを真剣に受け止め、実現のため具体的な行動を起こすべきだ。[br][br] 核兵器禁止条約は2017年、国連で122カ国・地域が賛成し採択された。核兵器の開発・保有・使用などを全面的に禁じる史上初の条約だ。前文で被爆者の苦しみに留意すると記している。それまでの核拡散防止条約(NPT)が米ロなど5カ国の核保有を認め、インドやパキスタンといった未加盟国も核兵器を保有しているため、非保有国や非政府組織(NGO)が主導して全面禁止する条約が生まれた。[br][br] ただ禁止条約も不参加国を拘束できず、核保有国は条約に反対する。米国と同盟関係にある日本政府は保有国抜きでは効果がないとし、条約の署名・批准をせず「保有国と非保有国との橋渡しに努める」と繰り返す。[br][br] しかし政府は橋渡しのためどう動こうとしているのだろうか。加藤勝信官房長官は禁止条約の発効決定後の記者会見で、不参加の方針を示しつつ「取り組みを地道に行う」としたが、具体的な説明は聞かれなかった。[br][br] 条約発効後、締約国会議が開かれ、非締約国のオブザーバー参加も認められる。被爆地や与野党などから日本の参加を求める声は強く、広島、長崎での会議開催も提案されている。政府は慎重な構えだが、核廃絶への第一歩として、オブザーバーとしてでも出席してもらいたい。[br][br] 米ロ、中国、北朝鮮などの核兵器開発を巡る情勢は緊張感をはらみ、核保有国は安全保障上の核抑止力を強調する。だが軍拡競争の揚げ句、核兵器が使われたら世界の破滅にもつながる。[br][br] 核兵器禁止条約の発効決定を受け、被爆者らは日本政府に核依存からの脱却と条約批准を強く求め、核廃絶を望む国際世論も根強い。こうした訴えに正面から向き合ってほしい。