天鐘(10月26日)

各国首脳らが集う国連会議。ある小国の大統領はいつものノーネクタイ。壇上から会場を見渡し、諭すように語った。「貧乏な人とは少ししかものを持っていない人でなく、無限の欲があり満足しない人のことだ」▼左翼ゲリラとして軍事政権下で投獄4回、うち脱獄.....
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 各国首脳らが集う国連会議。ある小国の大統領はいつものノーネクタイ。壇上から会場を見渡し、諭すように語った。「貧乏な人とは少ししかものを持っていない人でなく、無限の欲があり満足しない人のことだ」▼左翼ゲリラとして軍事政権下で投獄4回、うち脱獄2回。ホセ・ムヒカさんは後にウルグアイ第40代大統領になる。報酬の大半を寄付し、農場で暮らし、資産は古びた愛車だけの「世界で最も貧しい大統領」▼清貧を是とする2012年の演説は世界の価値観に一石を投じた。当然のように理想論との批判も浴びたが、それ以上に共感の輪が広がる。大量消費社会に潜在的な危機感を抱く人々の心に響いたのだろう▼わが国のリーダーは緊急登板で9月に就任したばかり。対抗する野党は再結集を果たした。きょうの臨時国会で菅義偉首相が所信を表明する。「安倍1強」を経て、新たな政治のステージが本格的に幕を開ける▼デジタル化や携帯電話料金の値下げは規制改革の象徴。一方、日本学術会議の任命拒否では明確な説明を避け、組織の見直しで局面転換を図る。「前例踏襲の打破」は聖域なき覚悟か、ご都合主義の看板か▼ムヒカさんは先日、政界引退を表明した。言葉は政治家の命というが、数々の至言は今後も色あせないだろう。さて新首相が発するメッセージとは。いかにして国家を導き、国民の幸せを実現するのか。