11月3日の米大統領選まで残すところ10日。再選を目指す共和党のトランプ大統領は劣勢のままゴールが迫り、大逆転を狙う。対立候補の民主党のバイデン前副大統領は逃げ切りを図るが、勝敗の鍵を握る激戦州では接戦となっており、勝負の行方は最後まで分からない。[br] 世論調査によると、国民の8割弱が過去の選挙より重要と考えているとされ、新型コロナウイルス禍の中、これまで以上に有権者の良識ある判断が求められる。平均支持率では、バイデン氏が7~8ポイント優位にあるが、南部フロリダ、東部ペンシルベニアなどの激戦州ではその差が縮小しつつある。[br] トランプ氏は今月初めに新型コロナに感染したが、早々と復活を宣言、精力的に遊説中。77歳と高齢のバイデン氏はオンラインを基本に訴えを続けており、動と静の対照的な選挙戦だ。[br] トランプ氏の戦略は激戦州を中心に熱狂的な支持者らによる遊説集会を開催、その熱気と勢いを全米に拡大し、競り勝つというものだろう。[br] しかし懸念されるのは同氏の過激な個人攻撃ぶりだ。バイデン氏の息子が外国から巨額の報酬を得ていた疑惑を取り上げ「バイデン一家は犯罪組織だ」と罵倒。中西部ミシガン州の集会では支持者から民主党の州知事を「投獄しろ」との声が上がると、「全員を投獄しろ」と応じて見せた。オバマ前大統領やバイデン氏自身を指したものであり、社会の分断と対立をあおる言動に他ならない。[br] 集会では参加者が密集し、マスクをする人はほとんどいない。トランプ氏は「自分はスーパーマンだ」と感染に負けなかった強さを誇示。政権のウイルス対策の支柱であるファウチ博士を「大惨事だ。あほの話にうんざりだ」とこき下ろした。[br] トランプ氏の科学軽視の姿勢は随所に見られるが、米国が最多感染国になった原因の大半はこうした対応にある。[br] 有力紙ニューヨーク・タイムズは「国家的危機を終わらせよう」との社説を掲げ、トランプ氏の再選に反対を打ち出した。主要メディアだけではなく、権威ある科学誌や大衆誌もバイデン氏支持を表明しており、トランプ氏への風当たりは強い。[br] 政治家は自分の利益ではなく、社会へ奉仕することを優先すべきだが、トランプ氏には「欠陥人間」(元米高官)と評されるように、信用できない言動が多すぎる。超大国の指導者として「どちらが信頼に足り得るか」。米有権者に求めたいのはこの尺度だ。