契約社員やパート、アルバイトなど非正規労働者と正社員の待遇格差を巡り最高裁が5件の判決を言い渡した。個別のケースにより正社員との格差を不合理とするかどうかの判断が割れた。[br][br] 事情によって結論が異なるのはむしろ当然だ。2018年のハマキョウレックス訴訟などの判決で最高裁は非正規の有期労働契約のうち旧労働契約法に違反する労働条件の部分は無効としたが、これを今回の判決が基礎としたのは共通するからだ。[br][br] 個別の事情を綿密に調べ、必要ならば具体的な救済をしていく。この最高裁の姿勢が明確になった意味は大きい。格差解消に向け、なお一層の努力を関係者に求めたい。[br][br] 5件の判決のうち、13日に第3小法廷が言い渡した大阪医科大と東京メトロ子会社の判決では、ボーナス(賞与)や退職金、賃金などの格差は旧労働契約法が禁じた「不合理な格差」とまでは評価できないとし、非正規側に厳しい判断をした。退職金には有為な人材確保や継続的勤務への功労報償など複合的な性格があるという理由だった。[br][br] ボーナス、退職金の判決から感じるのは使用者側から見る視点の強さだ。退職金判決では「使用者の裁量判断」を「尊重する余地は比較的大きい」との補足意見も述べられた。[br][br] しかし最高裁がボーナスや退職金などでは自由に格差をつけてもいいとお墨付きを与えたと見ることはできない。判決は不合理な格差と認める場合が「あり得る」と明確に述べている。同一労働同一賃金の考え方を否定したわけでもない。[br][br] 15日の第1小法廷判決は、これを明確にした。日本郵便の契約社員が求めた扶養手当や年末年始勤務手当などの支払いがないのは不合理と判断している。日本郵便は年末年始勤務手当について人材の確保・定着を図るためと使用者側の理由を主張したが、退けられた。[br][br] 現在、非正規雇用率は約4割。働き方改革が進む中、旧労働契約法の規定は削除されたが、パート有期労働法に不合理な待遇や差別的取り扱いの禁止は引き継がれた。15日の判決は法改正の動向に沿ったものだろう。[br][br] 一連の判決で今後の課題が浮上した。使用者側には賃金・勤務体系の整備が求められる。多発しかねない労働紛争を予防しなければならない。非正規労働者からの相談の受け皿も必要だ。行政的な指導が重要になる。官民ともに新たな紛争解決の仕組みを整えるべきだ。早急に議論を深める必要がある。