新型コロナウイルス感染症への対策は10月から新しい段階を迎えた。政府の観光支援事業「Go To トラベル」に東京発着が加わったほか、利用者が旅先で使える地域共通クーポン、飲食業界を支援する「Go To イート」も始まり、観光地に活気が戻った。出入国制限も緩和され、政府は大半の国から留学生ら中長期滞在者の入国を解禁した。[br][br] 社会経済活動のためとはいえ、いずれも人の移動で感染の危険を増やす。飲食店の感染予防、検疫を強めてもゼロにするのは難しい。感染が急拡大する際は地域限定で自粛を要請するなどブレーキの仕組みが必要だ。場当たり的な対応を繰り返すことは許されない。[br][br] 緊急事態宣言発令から半年が過ぎ、内外の事例から多くの教訓を得た。米ホワイトハウスの集団感染が示すように感染がどう広がるかも分かってきた。マスクなしの大声の会話や密接な会食は感染の場になる。知識でリスクはかなり減らせる。[br][br] 日本は春の第1波、夏の第2波を経た後、1日の新規感染者は500人前後で横ばい。この傾向は世界的に共通している。地方では抑えられても、大都市では流行が収まらないだろう。[br][br] 世界保健機関(WHO)の専門家は「世界人口の約10%が感染した可能性がある」と述べた。日本の感染率は10%より大幅に低いが、把握された累計感染者約8万8千人の10倍以上の100万~200万人が感染した可能性はある。全体像を推定して対策を練る段階に来ている。[br][br] 季節性インフルエンザの流行期に間もなく入る。今秋はまだ少ないが、毎年1千万人前後がかかる感染症だ。発熱などの症状では区別できないコロナとの同時流行を念頭に備えたい。[br][br] 厚生労働省は方針を変え、コロナ感染の疑いがあれば、かかりつけ医に電話で相談するよう求めている。軽症や無症状は宿泊施設や自宅での療養を勧めて入院対象を絞り込んだ。ただ、重症化しやすい高齢者や持病のある人は入院が望ましい。[br][br] インフルエンザ診療は開業医が担っているので地域の医師会や患者の協力が重要。各地で態勢整備を急いでほしい。コロナの拡大を察知するためにも早期診断は欠かせない。診断が早いほど致死率は下げられる。[br][br] 新型コロナは発症前の無症状の人から感染しやすいため把握が難しい。薬やワクチンの開発が待望されるが、過剰な期待は危うい。コロナと共存するには検査と医療の拡充で予防や救命に努める基本を重視すべきだ。