時評(10月3日)

2021年度政府予算の府省庁から出された概算要求が締め切られた。要求総額は過去最高の20年度の105兆円を上回り、7年連続で100兆円超となる見通しだ。 ただコロナ禍の進行などで金額を示さない事項だけの要求が目立ち、透明性が後退したのは問題.....
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 2021年度政府予算の府省庁から出された概算要求が締め切られた。要求総額は過去最高の20年度の105兆円を上回り、7年連続で100兆円超となる見通しだ。[br][br] ただコロナ禍の進行などで金額を示さない事項だけの要求が目立ち、透明性が後退したのは問題だ。今後大幅な要求上積みが見込まれ、かつてない膨張予算となりそうだ。コロナ禍で要求期限が例年より1カ月延期された分、査定作業も短縮され、厳しい環境での編成作業となる。[br][br] だが財政事情は瀕死(ひんし)の状態にある。20年度予算は安倍政権で長く続いた歳出膨張にコロナ対策費が加わり、2次補正後に160兆円に達する。うち借金(国債)による分が90兆円だ。[br][br] 21年度予算はかつてない危機での編成だからこそ、歳出膨張が国民負担増を招く悪循環を断ち切るため、財務省は不要不急や無駄な歳出を徹底削減する必要がある。前政権下で弱体化した同省に奮起を促したい。[br][br] 厚生労働省は前年度当初並みの33兆円だが年金や医療を抱え、省庁の中で突出した額だ。検査拡充やワクチン開発などコロナ対策費は事項要求となり、さらに数兆円の上積みを見込む。他省庁もコロナ関連の要求が際立つが、便乗がないか精査が必要だ。新政権の目玉の行政デジタル化も、マイナンバーカード普及で1451億円(総務省)など先陣を争うように関連要求が相次いだ。[br][br] 防衛費は5兆4千億円台と過去最高で、9年連続増加となるかが焦点だ。国土交通省は6兆円弱と横ばいだが、国土強靱化(きょうじんか)経費は事項要求で、大幅上積みを見込む。借金の元利払いに充てる国債費は、9・2%増の25兆5千億円と歳出総額の4分の1に膨らんだ。[br][br] 予算要求の無駄などを査定するのが財務省主計局だ。しかし20年度補正予算では、コロナとは無関係に見える便乗予算の紛れ込みや空前の10兆円予備費、「Go To キャンペーン」などで不明朗な民間委託費が問題になった。首相官邸の指示が優先され、主計局の査定権限は空洞化した。OBから「主計局は査定するのが仕事だろう」と批判され、省内は危機感と無力感が入り交じる。[br][br] 行政をつかさどる政治家は国民に選ばれた優位性があるものの、予算が時の政権の専横に陥らないよう監視するのは主計官僚の役割。緊張感を持って政治に対峙(たいじ)、税金が公正に使われるよう使命を果たしてほしい。前政権の放漫財政を継承するのか新政権の試金石ともなる。