神奈川県座間市で2017年、男女9人の遺体が見つかった事件で、強盗強制性交殺人罪などで起訴された白石隆浩被告(29)の初公判が東京地裁立川支部で開かれた。[br][br] 事件は、被告がツイッターを通じて自殺願望を示していた多くの若者たちを誘い出して次々と殺害したとされ、特異な経緯が社会に強い衝撃を与えた。[br][br] インターネットの普及に伴い、情報や意見の伝達、交換にツイッターのような会員制交流サイト(SNS)などが多用され、若い世代を中心に欠かせない通信手段になっている。[br][br] 半面、SNSなどが介在する犯罪は多発し、ネット時代の負の側面にも警戒が必要だ。座間事件の裁判を機にネット犯罪を防ぐ方策を検証し、苦しい心情を吐露する人々を手厚く、速やかに支援する施策を望みたい。[br][br] 白石被告は17年8月~10月に座間市のアパートで、10代から20代の女性8人に乱暴し、男性1人も含め9人を殺害、現金も奪ったなどとして起訴された。初公判で検察側は、被告はツイッターに自殺したいなどと書き込んだ被害者を、一緒に自殺しようとだまして誘い込んだと指摘した。[br][br] 白石被告は起訴内容を認めたが、弁護側は殺害に被害者の同意があったとして、殺人罪より法定刑が軽い承諾殺人罪を主張。今後の審理で事実関係や動機など全容を解明してほしい。[br][br] さまざまな事情に悩む若者らが「死にたい」とネットに投稿する例は以前から見られ、集団自殺などに引き込むネットの「自殺サイト」が社会問題化したこともある。座間事件後、政府は民間と連携して危険が感じられるSNS投稿の監視態勢を強め、相談を受ける窓口の整備など再発防止策を進めた。それでも自殺を誘うような書き込みは続き、課題が残る。[br][br] 自殺願望に限らず、ネットの世界は家庭内暴力やいじめ、貧困などに苦しむ人たちが悩みから避難し、SOSを出す場にもなっているとされる。最近はコロナ禍への不安の訴えも多いようだ。こんな状況を反映してか、昨年、SNSを使って性犯罪などの被害を受けた18歳未満は2千人を超え、過去最多だった。[br][br] 捜査段階で白石被告は被害者について「実際に死にたいと思っている人はいなかった」と供述したという。ネット投稿者らの心のケアを続ける民間団体は、助けを求める人が犯罪に遭うのを防ぐため、迅速な支援の重要性を強調する。取り組みが効果を上げるよう、政府には後押しを強化してもらいたい。