口腔がん治療装置開発に意欲 八戸高専専攻科の上野さん

開発を進めている口腔がんの温熱治療装置について解説する上野晴奈さん(右)と井関祐也准教授=9月上旬、八戸高専
開発を進めている口腔がんの温熱治療装置について解説する上野晴奈さん(右)と井関祐也准教授=9月上旬、八戸高専
八戸高専専攻科機械システムデザインコース1年の上野晴奈さん(20)=八戸市出身=が、口腔(こうくう)がんの治療を目的とした新たな温熱治療(ハイパーサーミア)装置の研究開発を進めている。手術のような体の切除が不要なため、術後の負担が軽減できる.....
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 八戸高専専攻科機械システムデザインコース1年の上野晴奈さん(20)=八戸市出身=が、口腔(こうくう)がんの治療を目的とした新たな温熱治療(ハイパーサーミア)装置の研究開発を進めている。手術のような体の切除が不要なため、術後の負担が軽減できる点が特色。上野さんは「医工学の知見を生かして治療方法の改善に貢献したい」と意欲を見せる。[br] がん細胞は、42~45度で一定時間加温されると徐々に減少することが確認されており、現在は温熱治療も併用療法の一つとして健康保険が適用され、一部の医療機関が手掛けている。[br] 温熱治療装置は電子レンジのように、電極から高周波の電磁界を発生させて患部を加熱する仕組みが一般的。ただ、既存の装置では体の表層部を加温するにとどまり、効果は限定的だった。[br] これに対し、明治大理工学部の加藤和夫教授の研究グループは2000年頃、「電磁界共振」という現象を利用することで体内の深部の加温が可能となり、さらに周波数を変更することで加温箇所も変えられることを発見。上野さんは加藤教授に師事した井関祐也・八戸高専産業システム工学科准教授の研究室で、これらの成果に基づいた装置の改良研究に携わっている。[br] 上野さんは特に、口内にメスを入れることで手術後のQOL(生活の質)低下や後遺症が懸念される口腔がん治療への応用を模索。従来試作されていた円筒型装置の場合、頭部を入れた際に熱がこもる恐れがあるため、装置を長方形にして頭部の出入り口を広く開けることを考案した。ただ、長方形の装置では電磁界が不安定になることから、コンピューターシミュレーションなどを通じて解消するのが当面の課題だ。[br] 上野さんの研究は本年度、長岡技術科学大(新潟県)技術開発教育研究振興会による研究助成に採択された。八戸高専では初の快挙で、注目度の高さがうかがえる。[br] 元々、医学的課題に工業分野からアプローチする「医工学」に関心を持って同校に入学したという上野さん。「在学中に試作機を何とか完成させ、後輩にさらなる研究を託したい」と笑顔を見せる。[br] 井関准教授は「実用化までのハードルはまだ高いが、より良い治療の実現に向けて研究を続けて」とエールを送った。開発を進めている口腔がんの温熱治療装置について解説する上野晴奈さん(右)と井関祐也准教授=9月上旬、八戸高専