天鐘(9月19日)

真偽のほどは別にして、昔聞いた、ある知事選挙でのエピソード。投票日、結果を予想するために出口調査に雇われた若いアルバイト君、投票を終えて出てきた男性に声を掛けた▼「どなたに入れました?」「私です」「まじめに答えてください」「ですから、私です.....
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 真偽のほどは別にして、昔聞いた、ある知事選挙でのエピソード。投票日、結果を予想するために出口調査に雇われた若いアルバイト君、投票を終えて出てきた男性に声を掛けた▼「どなたに入れました?」「私です」「まじめに答えてください」「ですから、私です」。実はこの男性、立候補していた現職の知事。残念なことにアルバイト君、そのお顔をご存じなかったようだ▼現職の知名度が実際にどれほどだったかはさておき、アルバイト君は赤面の至りである。後に男性の正体を聞かされ深く落ち込んだ。後悔と共にしっかりと教訓を胸に刻む。「本人の確認だけはちゃんとしておくこと」▼さて、こちらは笑い事ではない。本人確認をちゃんとしていなかったために起きた貯金の不正引き出しである。はやりの電子決済サービスが狙われた。慌てて残高照会に走ったという方もおられよう▼便利で、お手軽、お得です。そんな宣伝文句に本当に大丈夫かと思ってしまう。やはり露呈したガードの甘さ。ネット時代に盤石であるべき「安全」は、いつも電脳空間に暗躍する「なりすまし」とのいたちごっこだ▼今回の一件、銀行口座があるだけで被害の恐れがあるというから怖い。日々、その金額は膨らんでいる。「私です」「本当ですか」。闇からのぞく不正の顔に、サービス側にも銀行にも、ここはじっくりと目を凝らしてもらうしかない。