東南アジア諸国連合(ASEAN)と域外国の外相らによる一連の会合がオンライン形式で開かれ、南シナ海を巡り米中両国が激しく対立した。ASEAN各国は、自陣営への取り込みを図る米中に不満と警戒心を見せる一方で、両国との間合いに苦慮した。[br] ASEAN各国にとり、中国の軍事力を背景にした強引な南シナ海進出への対抗上、米国との連携は重要だ。だが、新型コロナウイルス対策や貿易面で中国の存在感は大きく、米中対立に巻き込まれることを懸念している。[br] 最近、米中が対立を激化させたきっかけは、トランプ政権が7月、南シナ海での中国の権益主張を否定。南シナ海の埋め立てに関与した中国企業に初の制裁を科すなどしたことだった。[br] 強く反発した中国は南シナ海で弾道ミサイルを発射したほか、軍事演習を相次いで行い、米軍に対抗する姿勢を示した。米軍も空母も参加させた軍事訓練などを活発に行い、緊張が高まった。こうした一触即発の状況下では、偶発的な衝突が懸念される。米中は、軍事衝突の回避に努めるべきだ。[br] 南シナ海の領有権を巡り、ベトナム、フィリピンなどASEANの一部加盟国と中国が長く争う中、中国は独自の根拠で南シナ海ほぼ全域の領有権や管轄権を主張、軍事拠点化を進めている。ASEANの会合でポンペオ米国務長官は「米国は南シナ海における中国の主張を違法と見なしている」とし、中国の領有権を否定。一方、中国の王毅国務委員兼外相は米国を「南シナ海軍事化の最大の推進者になっている」と非難した。[br] これに対しASEAN加盟国の対応は二分されており、カンボジアとラオスは、中国寄りの立場をとる。新型コロナウイルス禍で、中国が医療、経済支援をてこに影響力拡大を図っており、ASEANが一枚岩で中国に相対するのは、ますます厳しい状況だ。[br] 日本も参加するASEAN地域フォーラム(ARF)閣僚会議の議長声明では、南シナ海情勢に関し改めて「懸念」の文言を盛り込み、「状況をさらに複雑化させ得る行動を回避する」としたが、草案段階にあった「力の不行使」を直接促す表現は削られた。しかも米中の閣僚はARFを欠席した。ASEANは、結束して米中対立による南シナ海での軍事衝突を避ける役割を果たすべきだ。南シナ海を海上輸送路とする日本もASEANと協力し、米中の対立を避ける努力をしてほしい。