風間浦村の下風呂、易国間、蛇浦の3漁協が、曲折を経て再び合併を目指す方向となった。是非について判断が揺れた蛇浦が、9日の臨時総会で合併推進を承認。改めて下風呂、易国間に協議継続を要請する。[br] 当初の見込み通りであれば、今頃は新漁協の設立委員会が始動していたはずだった。4年近くにわたって合併推進協議会で検討を重ね、合併仮契約書にも調印済み。だが最後の関門だった8月の臨時総会で波乱が起きた。[br] 下風呂と易国間が組合員の3分の2の承認を得た一方、蛇浦は賛否が同数となり、一転して破談の危機を迎える。結果として蛇浦は組合員の請求に応じて開催した先の臨時総会で合併を承認したものの、混乱によって合併仮契約書は作り直しとなり、下風呂と易国間も改めて臨時総会が必要になる。12月の新漁協発足を目指す当初計画の遅れが懸念される。[br] 「下風呂と易国間の漁師が蛇浦の海草を採りに来ることになってしまう」。蛇浦の臨時総会で反対票を投じた組合員の言葉である。[br] 申し合わせによると、漁場は合併後も旧漁協単位でしか認めない。2016年12月に合併協が発足してから、特に慎重を期して議論を重ねて導いた結論である。それが合併直前になって、まことしやかなうわさとして広まった。[br] 説明は尽くされていたのだろうか。蛇浦が合併協発足後に開催した説明会や座談会は3回ほどだという。今年は3月の通常総会と、臨時総会前のお盆期間中。組合は直近の説明会で異論が出なかったとしているが、8月の“合併否決”は理事側の説明不足に「ノー」を突きつけた結果と見る向きもある。[br] 今回の合併は組合員に変化を強いないよう配慮している。漁業権を引き続き保障し、販売手数料は3漁協でそれぞれ適用する率を引き継ぐ。出資金の平準化など合併の障害になりそうな案件は先送りした。[br] 計23人いる理事を9人に減らすなど、経営基盤強化に向けた費用削減を進める意味合いが強い。近年の水揚げ減少を受け3漁協とも経営は実質的に赤字で、大間原発の漁業補償金を繰り入れて維持している。3漁協とも補償金は残り1億円余で、数年で底をつく可能性がある。[br] 一方で合併に伴う変化に組合員が警戒心を抱くのは当然の反応でもある。一連の混乱を踏まえて合併の必要性を改めて考え、新漁協の適切な運営や体制づくりにつなげたい。