八戸港の水産物卸売業務が株式会社八戸魚市場に一本化され、2カ月半が過ぎた。夏場の盛漁期を迎えて以降も大きなトラブルはなく、運営は順調に推移しているもようだ。人手不足など課題はなお残るが、体制一新を産地市場の活性化につなげるために、今後も官民一体となった取り組みが求められよう。[br] 同港は例年、大中型巻き網船団の八戸沖でのスルメイカ漁が解禁となる7月から水揚げが急増し、本格的な盛漁期に突入する。9月には中型底引き網船の休漁明けの操業が再開。混雑は巻き網船団のサバ漁が落ち着く12月ごろまで続き、大小さまざまな漁船が港内を往来する。[br] 今回の一本化は同社にとって実質的な人員減となった。一連の業務に加え、来年には小中野地区に建設中の荷さばき施設D棟の供用が始まる予定で、人手が割かれるのは必至だ。スムーズな運営を維持するためには、より一層の工夫が必要になる。[br] 同社は46年間にわたり2者体制の下、“ライバル”だった八戸みなと漁協と切磋琢磨しながら市場を盛り上げてきた。しかし、近年は全国的な漁獲不振を背景に、産地市場の経営は厳しさを増し、卸売部門は2者とも赤字だった。[br] 八戸市水産事務所によると、同港で今年1~8月の水揚げは2万200トン。極端な不漁だった昨年同期を43%ほど上回っているものの、本調子にはほど遠い。今後は漁船誘致などで他県との競合が一層強まるとみられるだけに、今まで以上に行政側との連携が重要になるだろう。[br] 全国的な少子高齢化を背景に、水産業界でも人手不足は年々深刻さを増している。国がまとめた「水産白書」によると、国内の漁業就業者は1988年から2018年までの30年間で61%減少し、年齢別で65歳以上の割合が11・5%から38・3%へと高くなった。働き手の確保は喫緊の課題といえる。[br] 同社は若い世代の就労を呼び込む目的で、1992年に盛漁期以外の市場休業日を現在の水・日曜から土・日曜へと変更したことがあった。結局は定着しなかったものの、近年の労働をめぐる環境は30年前と大きく変化しており、再検討の余地もあると思える。[br] 漁港のハード面の整備はこの20年で一定の成果がみられた半面、効率化を目指した市場機能の集約は実現せず。目玉の荷さばき施設A棟も稼働が低迷し、市民や漁業関係者から「赤字垂れ流し」と批判が絶えない。行政側はいま一度、現場の声に耳を傾けるべきではないか。