今月13日に初日を迎える大相撲秋場所で、新十両に昇進した十和田市出身の錦富士(伊勢ケ浜)が西13枚目から関取としてのスタートを切る。青森県出身では2017年の大成道(八戸市出身)以来3年ぶり、十和田市出身としては05年の舞風以来15年ぶりの関取誕生。大けがを乗り越え、新たなステージに挑む24歳の若者に対する地元ファンの注目度は大きい。[br] 小学3年の時に両親の勧めで相撲に出会い、市立十和田中から強豪・県立三本木農業高に進んだ。1年でインターハイ団体優勝メンバーに名を連ね、3年では同個人で3位に入賞。卒業後は学業と競技の両立を目指して名門・近畿大に進んだが、入学後は一転、中学時代から抱いていた角界入りへの思いが日に日に募ったという。[br] 転機は、近大を中退して大相撲の最高位まで上り詰めた伊勢ケ浜親方(元横綱・旭富士)のラブコールだった。「学生として過ごすより、(大相撲で)必死に稽古を積んだ方がいい」。錦富士はこの一言で大学中退を決断し、伊勢ケ浜部屋に入門。入門後は当時現役だった安美錦(現・安治川親方)の付き人として、技術だけでなく周囲への気配りの大切さを学び、16年9月に初土俵を踏んだ。同郷の大先輩2人が夢の実現を支えたようだ。[br] デビュー後は、持ち前の鋭い立ち合いから相手の右上手を狙う取り口で白星を重ね、順調に番付を上げたが、十両まであと一歩の幕下上位で迎えた昨年秋場所で試練に直面。取組中に左腕に大けがを負い、翌場所を休場したことで番付は幕下下位に降下した。[br] それでも、不屈の闘志で復活を遂げる。万全の状態でないながらも今年初場所は勝ち越し、春場所では初の幕下優勝。東幕下3枚目で迎えた夏場所も5勝2敗と勝ち越し、場所後の番付編成会議で十両昇進が決まった。下半身強化に努めるとともに、前に出る相撲を意識したことが功を奏したようだ。[br] かつては横綱、大関も輩出し、04年初場所は8人もいた幕内の青森県出身力士だが、秋場所番付では西前頭5枚目の宝富士と同9枚目の阿武咲=ともに中泊町出身=の2人だけ。往時を知るファンにとってはさみしい限りだろう。[br] 先月11日に帰郷した際は「故郷の応援があるからこそ頑張れる。精進して、より上を目指す」と飛躍を誓った錦富士。偉大な郷土の先輩に続けるよう、秋場所ではまず勝ち越しへ、闘志満々の相撲を期待したい。