【再処理完工延期】目標実現は不透明「急ぎすぎ」不安の声も

使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の完工目標を2022年度上期に1年先送りすると表明した日本原燃。6年半に及ぶ新規制基準の審査を終え、安全対策工事の物量が固まり、完工までの道筋が見えてきた。審査の長期化を理由としてきた過去の数度にわたる延.....
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 使用済み核燃料再処理工場(六ケ所村)の完工目標を2022年度上期に1年先送りすると表明した日本原燃。6年半に及ぶ新規制基準の審査を終え、安全対策工事の物量が固まり、完工までの道筋が見えてきた。審査の長期化を理由としてきた過去の数度にわたる延期と現状は異なる。ただ、残り時間は約2年と少なく、推進側の地元関係者からも「急ぎすぎではないか」と懸念の声が上がる。工事の本格着手に必要な詳細設計の認可(設工認)の審査期間が最低1年と見込まれる中、目標の実現性は不透明なままだ。[br] 「準備工事は進んでいるから、残り2年でも実現は可能だろう」。原燃が延期について社内で調整を進めていた8月中旬。同社関係者は新たな完工目標のクリアに自信をにじませた。[br] 安全対策工事のうち、時間を要する新たな緊急時対策所の建物はほぼ完成。原燃が「1年延期」という強気にも見える姿勢を提示した背景には、設工認を終えてからでなければ着手できない工事が、短期間で済む既存設備に影響を与える電気系統や配管の接続などに限られているためだ。[br] だが、原燃が延期の主な要因に挙げた冷却塔の移設や、重大事故時に放射性物質の放出を抑制する凝縮器の設置など工事は多く残る。[br] 完工を急ぐあまり、事故やトラブルにつながらないか―。ある村議は「工事量を見ると、明らかに時間が足りない。今回の1年という延期幅は(増田尚宏)社長の空回りなのではないか」と不安を口にする。[br] 増田社長は21日の会見で「工程の精査は現場の意見も聞いて進めた。(新たな完工目標が)社員の負担になることはないと思う」との認識を示した。[br] 設工認の審査で確認すべき機器は安全上重要な物だけでも1万個以上。審査が効率的に進まなければ「数年オーダー(規模)」(原子力規制委員会の更田豊志委員長)と、さらに長引く可能性もある。[br] これまで事業に協力する県と村の期待を原燃は何度も裏切ってきた。県関係者は新基準の審査合格後に示した完工目標が妥当かは判断できない―としつつ、こうつぶやいた。「今回の延期がラストチャンスだ」。