ヒラメ資源、劇的回復に貢献 階上での栽培事業30周年

体長約6センチまで育ったヒラメの稚魚=7日、階上町
体長約6センチまで育ったヒラメの稚魚=7日、階上町
階上町の青森県栽培漁業振興協会(木浪昭代表理事)が、全国に先駆けて漁業者と行政一体で取り組んできたヒラメの栽培事業が本年度で30周年を迎えた。「青森モデル」として各地の模範となった同事業は、県のヒラメ漁獲量の劇的な回復をもたらした。だが、近.....
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 階上町の青森県栽培漁業振興協会(木浪昭代表理事)が、全国に先駆けて漁業者と行政一体で取り組んできたヒラメの栽培事業が本年度で30周年を迎えた。「青森モデル」として各地の模範となった同事業は、県のヒラメ漁獲量の劇的な回復をもたらした。だが、近年は再び資源の減少に直面する。事態の打開を図るため、同協会は本年度、放流カ所を3分の1に絞って集中的に行う新たな試みを開始。稚魚の生残率の向上につなげ、2016年に漁獲量1045トンとなって以来の日本一奪還と千トン超えを目指す。[br] 県のヒラメ漁獲量は、1976年から83年まで8年連続で全国1位を誇ってきた。ただ、76年の1508トンをピークに下降線を描き、80年代後半には減少に歯止めが掛からなくなった。そこで県や市町村、漁協など県内の関係者は87年に第三セクター方式の同協会を立ち上げ、資源の回復に向けたヒラメ栽培漁業の事業化計画を策定。同年に「県の魚」にヒラメが制定されたことも追い風に、取り組みを加速させた。[br] ヒラメの赤ちゃんである種苗を大量生産し、海に放流する計画は、90年4月から本格的に開始。毎年200万尾の稚魚放流を続けると、89年に224トンまで落ち込んだ漁獲量は95年以降回復に転じ、2000年には1807トンと過去最高を記録した。計画開始から19年までに漁獲量日本一に計16回輝いたほか、千トン超えは計14回を数える。[br] 一方、近年の種苗生産は、伝染性の魚病(アクアレオウイルス)の発生などで、目標のおよそ半分の100万匹程度にとどまる。本年度は、新型コロナウイルスの影響や導水管のトラブルにも見舞われた。生産着手が例年より1カ月遅れの5月上旬となり、放流は約87・5万匹とさらに減る見通しだ。[br] ヒラメの稚魚は、砂浜の波打ち際に分布する甲殻類のアミ類を食べて育つ。そのため、砂浜を持つ沿岸部での放流に適するが、各漁協から栽培事業の費用を負担してもらっている経緯から、これまでは各漁協に近い48カ所で放流してきた。ただ、本年度は稚魚数が少ないことから、生残率を高めようと、適地16カ所に絞ることを決めた。[br] 新たな形式の放流は8月上旬にスタートし、9月上旬ごろまで続く。同協会の葛西浩史栽培部長は「稚魚は病気にかからず順調に育っている。放流効果が高い適地放流で大きく成長してもらい、『ヒラメ=青森』といわれるほど増やしていきたい」と強調。二木幸彦業務執行理事は「これまでの実績から、漁獲量千トンと日本一にこだわる漁業者は多い。今後も放流方法などを工夫し、関係者の悲願を達成していきたい」と意気込む。体長約6センチまで育ったヒラメの稚魚=7日、階上町