17日に発表された4~6月期の実質国内総生産(GDP)速報値は、新型コロナウイルスの感染拡大により経済活動が縮小した結果、前期比の年率換算で27・8%減と戦後最悪の落ち込みとなった。この下げ幅はリーマン・ショック直後の2009年1~3月期のマイナス17・8%を上回った。 政府は引き続き、経済活動の再開と感染防止策の両立を図る政策を推進する考えだが、感染拡大に歯止めがかけられるかどうか見通しが立っていない。 コロナ禍による経済の急激な落ち込みは全世界的な傾向だけに、日本だけが景気対策を取っても浮上するのは難しい。企業の倒産件数も毎月増加しており、景気が底割れして大型不況に突入する恐れもある。かといって、湯水のように赤字国債を発行して財政出動による対策を取るのも将来に禍根を残す。 コロナ禍の長期化により、オフィス以外で仕事をするテレワークが予想以上に浸透しているように、働き方にかつてない変化が起きている。そのカギを握るのがデジタル革命と呼ばれている、社会の構造改革だ。高速でデータや画像の送信ができる第5世代(5G)移動通信システムが普及して、モノの移動やお金の決済が画面上で完結してしまう世の中になる。 日本はこうした変化に対して出遅れが指摘されていたが、コロナ禍の終息後も対応できなければ、世界的なデジタル革命の動きについていけなくなる。 人口の減少、高齢化が進む中で生き残るには、デジタル革命に取り残されないように布石を打つ必要がある。例えばオンライン診療や教育のオンライン授業の拡大などを積極的に進めれば、人手不足の対策にもなる。 膨大な財政赤字を抱えている中で、単なる目先の需要拡大のために税金を際限なく費やす時代ではない。かつてそうした対策が経済波及効果を生んで需要拡大につながっていたが、成熟社会になった今は、あまり期待できない。コロナ後をきちんと見据えた将来の日本に役立つような、効果的な経済対策にお金を投ずるべきである。 民間企業はデジタル革命の動きに敏感に反応し始めている。富士通のように年功序列の人事制度を抜本的に改める企業も出てきており、働き方が変われば、それに倣う形で人事や賃金制度も変化せざるを得なくなる。企業も政府からの助成金だけを当てにするのではなく、コロナ後の変化を見通した新しい事業展開のスタイルを真剣に模索すべき時期に来ている。